社説(5/20):入管法改正見送り/抜本的に見直し再提出を

 政府、与党は、外国人の収容と送還のルールを見直す入管難民法改正案の今国会での成立を断念した。廃案となる見通しだ。難民申請による送還停止を2回に制限し、3回目以降は手続き中でも送還が可能になることなどに対して、人権上の問題があると国内外の批判が高まっていただけに、当然の対応だろう。

 国外退去命令を拒む外国人が入管施設に長期間収容されている状況を解消するだけで済む話ではない。外国人の支援や保護の視点にも立った抜本的な改正が必要だ。世界的にも著しく厳しいとされる難民認定実務の改善を進めることも急がれる。

 送還停止に制限を設け、難民申請の手続き中でも強制送還できることについて、上川陽子法相は衆院法務委員会で「本国情勢の変化など、認定を行うべき事情が含まれるかどうかを個別に検討した上で判断する」と述べ、相当な理由が認められる場合は送還しない考えを示していた。

 だが、例外を認めたとしても、誤って難民を母国に送還すれば、生命に関わることになる。個別に判断すること以前に、難民認定の質を高めるため、認定基準の明確化や事情聴取への弁護士の立ち会いなど、法務省の有識者会議がまとめた提言の実現が先だろう。

 改正案を巡っては、立憲民主党が、送還停止の制限に関する規定の削除や、身柄収容前の司法審査を柱とする10項目の抜本的修正案を提出。与党はそれとは別に、施行3年後の見直しなど2項目の修正を提示していた。

 大筋で合意していた与野党の修正協議が決裂した大きな要因は、名古屋出入国在留管理局に収容中だったスリランカ人女性が3月に死亡した事案。野党が求めた女性の様子などを映した監視カメラの映像開示を、法務省が保安上の観点などを理由に拒否。野党は反発を強め、衆院法務委での採決が2度にわたって見送られた。

 入管施設での死亡事例は後を絶たず、過去15年間で少なくとも17人の外国人の死亡が報告されている。今回の事案は、医療や精神的ケアを含めて入管の対応が適切だったかどうかを検証するためにも、真相究明が欠かせない。

 改正案に対しては、国連人権理事会の特別報告者が「国際的な人権基準を満たしていない」と再検討を求める書簡を日本政府に提出。国際的な難民保護を主導する国連難民高等弁務官事務所も全面的な見直しを求める異例の見解を発表するなど、海外からも批判や反対が相次いだ。

 法案の再提出に当たっては、そうした批判を真摯(しんし)に受け止め、入管行政の在り方を根本から見直した上で対応すべきだろう。多様性が尊重される中、従来の入管行政を維持しようとすれば、人権への配慮が欠けた国として国際的に取り残されかねない。

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