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たばこの健康影響を知ろう あす世界禁煙デー

インタビュー>ししど内科クリニック院長 宍戸友明氏

「喫煙はコロナ感染リスクを高めます」と語る宍戸氏
矢内氏

 収束の見えない新型コロナウイルスは、たばことどんな関わりがあるのだろうか。5月31日は世界禁煙デー。桃生郡医師会副会長、日本禁煙学会禁煙認定専門指導医を務める宍戸友明さん(62)に聞いた。

-新型コロナ禍が石巻地方でも続いています。

 「ウイルスの性格が段々と分かってきました。厚生労働省が発表した最近の日本のデータで、60歳以上の感染者の8・5%は症状が重く、5・7%は命を落としています。感染を完全に防ぐのは難しいですが、重症化を防ぎ、死亡者を出さないことは生活習慣や喫煙習慣を見直すことでできます」

-喫煙と関係があるのですね。

 「はい。世界保健機構(WHO)はたばこも重症化の原因になると宣言しています。厚生労働省、日本呼吸器学会などもホームページで喫煙の危険性を警告しています」

-喫煙していると感染リスクが上がると聞きました。なぜでしょうか。

 「感染予防で手洗いやマスクが重要なようにウイルスの付着した手で口元に触れることは感染リスクになります。たばこを吸うと汚染された可能性のある手を何度も口元に近づけることになるため、感染リスクを高めます」

 「たばこを取り出すときにフィルター部分を引っ張りますが、口にくわえる場所です。さらに喫煙室は密閉、密集、密接の『3密』の典型です。もし喫煙室の中にコロナ感染者がいた場合、そこにいた人は濃厚接触者となってPCR検査が必要になります」

-喫煙は新型コロナの重症化にもつながりますか。

 「中国・武漢を中心に新型コロナ患者1099人の臨床データを分析した研究で、喫煙者は人工呼吸器を装着されるか、あるいは死亡する危険性が非喫煙者の約3倍になることが明らかになりました。年齢や糖尿病、高血圧といった基礎疾患と比べても重症化の最大のリスクであることも報告されています。WHOも新型コロナ対策として禁煙することを強く推奨する声明を出しています」

-重症化につながるメカニズムを教えてください。

 「海外の研究で一因と考えられるメカニズムが報告されました。新型コロナウイルスは人の口や鼻の粘膜、気管や肺にあるACE2(エースツー)という受容体から体内に侵入することが分かっています。この受容体はたばこを吸う人で増加し、子どもは少ない。つまりたばこを吸う人は新型コロナウイルスが気道から体内に入りやすく、子どもは入りにくいということです。そのため喫煙者は重症になりやすいのではないかと考えられています」

-受容体とは何ですか。

 「生きている細胞の表面に存在するタンパク質の一種で、外部の刺激をキャッチし、細胞の内部に伝える入り口のような役割を持っています。例えればACE2という受容体を鍵穴とした場合、鍵に当たるのがコロナウイルスの表面のとげとげのタンパク質です」

-たばこを吸わない人とリスクはどう違いますか。

 「中国の入院患者で喫煙者か過去に喫煙した人は非喫煙者に比べ、感染した場合の人工呼吸器による管理、死亡のいずれかの状態に陥るリスクが約2・9倍だったとの報告があります」

-受動喫煙による煙を介して新型コロナ感染のリスクはありますか。

 「目に見える煙にコロナウイルスが付着して広がるわけではなく、たばこの副流煙による健康被害が感染リスクとなります。自宅で家族と過ごす時間が増えていますが、その結果、受動喫煙が増えてしまっては大切な家族の健康を害することになります。ベランダや台所の換気扇の下で喫煙しても、家族の受動喫煙はなくなりません」

-そんな中、禁煙治療の重要性は何でしょうか。

 「たばこは新型コロナだけではなく、がん、心臓病、脳血管障害、糖尿病、認知症、関節リウマチなど多くの病気との関連が分かっています」

-コロナ下で禁煙治療を考えている人はどうすればいいですか。

 「ストレスで喫煙量が増え、また喫煙した方がいるかもしれませんが、そんな今こそ禁煙のチャンスです。禁煙外来は2020年度からスマートフォンやインターネットを利用するオンライン診療が認められ、禁煙治療を受けやすくなりました。薬局で薬剤師と相談しながらの禁煙もできます。あなた自身と家族、同僚を守るためぜひこの機会に禁煙しましょう」

〔ししど・ともあき:石巻市出身。弘前大医学部卒。東北大医学部第2内科、石巻赤十字病院第2内科部長などを経て1998年12月からししど内科クリニック(東松島市)院長。〕

寄稿>石巻赤十字病院院長補佐 矢内勝氏「新型コロナウイルス感染症とたばこ」

 毎年5月31日は「WHO 世界禁煙デー」で、今年のテーマは「禁煙に取り組もう」です。WHOは、このスローガンを掲げるに当たり、2020年12月のWHOニュースルームに「たばこを止(や)めるべき100以上の理由」を公表しました。

 「たばこが原因となり世界で毎年800万人が死亡している中、喫煙者は新型コロナウイルス感染症の重症化・死亡のリスクが高いということが分かったため、多くの喫煙者が禁煙しようと決意した。その半面、新型コロナの世界的流行による社会的・経済的ストレスで禁煙するのは容易でないという状況もある」と前置きした上で、103の禁煙するべき理由を列挙しています。

 今日はその中から、あまり知られていない「たばこの害のトリビア」をいくつか紹介します。

●しわが増えて実年齢よりも老けて見える。喫煙により、皮膚の血液循環やコラーゲン、ビタミンAなどが減るため、10歳ぐらい老けて見える。

●受動喫煙で毎年100万人以上が死亡している。

●受動喫煙は肺がん、肺結核、糖尿病などの発病リスクを増やす。

●家庭での受動喫煙で、子どもの気管支喘息(ぜんそく)や中耳炎が増え、肺の発達が遅れるため子どもが成人した後のCOPD発病のリスクも増える。

●たばこを吸うと生涯で1億円以上が「煙に消える」(たばこ代、超過医療費、所得損失を含む)

●男女を問わず、喫煙は不妊のリスクを高める。禁煙すると、不妊のリスクが減り、早産、低体重出生、流産のリスクが減る。

●葉タバコ耕作者(貧困国の子どもを含む)は、タバコの生葉の表面からニコチンが皮膚に吸収されて発症する緑タバコ病(急性ニコチン中毒)に悩まされるだけでなく、大量の殺虫剤や化学物質にもさらされて健康を損なっている。

●アイコスなどの加熱式たばこも、ニコチンだけでなく多くの発がん物質を含んでおり、とても有害である。

●結核菌の保菌者(世界中で4人に1人の割合)がたばこを吸うと、肺結核を発病するリスクが2倍になる。

●喫煙で増えるがんは20種類以上(ほとんどのがんが含まれる)。

●喫煙者は、加齢性黄斑変性症で失明するリスクや白内障になるリスクが高くなる。難聴リスクも高まる。

●喫煙者は認知症、アルツハイマー病のリスクが高くなる。

●喫煙により口腔内が不衛生になり、歯周病、歯牙欠損を発症する。

●喫煙者は手術後の合併症が明らかに増える。

●たばこの煙には免疫を弱める作用や免疫機能の変調を来す作用がある。

●年間20万ヘクタール(石巻市、東松島市、女川町の合計面積の3倍)の森林が葉タバコ栽培とタバコ葉処理のために消失している。

●1年間に生産される紙巻きたばこから排出されるごみは毎年200万トン(震災後に出た石巻地域の総がれき量の3分の1)に上る。

 興味のある人は「たばこを止めるべき100以上の理由」でインターネット検索してみてください。禁煙したくなる理由がたくさん見つかります。まずは、たばこの害と禁煙で得られる利益について考えてみることが第一歩です。「禁煙してみようかな」と思ったら試してみてください。

 「減らす・軽くする・加熱式たばこに変える」のはNG、期日を決めて一気にやめるのがコツです。1回でやめられる人はまれ、何回もチャレンジして自分に合う禁煙方法を見つけて、初めて禁煙できる人がほとんどです。自力でやめられない人は禁煙外来を利用してください。禁煙したいという気持ちがあれば、禁断症状を軽くする禁煙補助薬を使って楽に禁煙できます。

 ニコチン依存症から離脱できると、たばこを我慢するストレスから解放され、心も体も健康になります。あなたが禁煙すれば、大切な家族や親しい人たち、地球も健康になりますよ。

〔やない・まさる:東北大医学部卒。東北大医学部第1内科、老年・呼吸器内科、マギール大(カナダ)で呼吸器病学の研究と臨床を行う。2001年石巻赤十字病院呼吸器内科部長、14年同院副院長、20年から現職。〕

石巻地域COPDネットワーク(ICON)

―参加の禁煙外来実施医療機関―
あべクリニック産科婦人科   0225(22)3322
石巻市立牡鹿病院       0225(45)3185
石巻市立病院         0225(25)5555
石巻赤十字病院        0225(21)7220
いしのまき矢吹クリニック   0225(21)6117
伊藤内科クリニック      0225(96)6372
駅前北きし内科クリニック   0225(95)3123
大街道じゅんクリニック    0225(92)1092
かづま内科クリニック     0225(96)7700
こばやし医院         0225(22)0789
佐藤内科医院         0225(22)3020
東海林内科胃腸科       0225(96)2823
しらゆりクリニック      0225(22)3717
中浦内科医院         0225(21)7551
中川内科外科医院       0225(72)2123
森消化器内科外科       0225(23)2151
よしろう内科         0225(22)3277
ししど内科クリニック     0225(83)8830
伊東胃腸科内科        0225(82)6666
石垣クリニック内科・循環器科 0225(83)7070
真壁病院           0225(82)7111
やもと内科クリニック     0225(98)3260
佐幸医院           0220(22)7003
ささはら総合診療科      0220(21)5660
登米市立上沼診療所      0220(34)2120
遊佐内科胃腸科医院      0220(22)2177
佐藤医院           0225(76)3420
米谷医院           0229(44)1133
女川町地域医療センター    0225(53)5511
南三陸病院          0226(46)3646
松島病院           022(354)5811
公立黒川病院         022(345)3101

【注】石巻地域COPDネットワーク(ICON)は石巻地域の慢性閉塞(へいそく)性疾患(COPD)患者を地域で支えるネットワークです。予約の要・不要や診療時間などは各医療機関にお問い合わせください。

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

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