社説(5/31):「流域治水」関連法成立/備えと住み方 再考の契機に

 国と自治体、民間、住民が連携し、河川の流域全体で水害抑止を目指す「流域治水」関連法が4月末に成立した。河川法や都市計画法など九つの法律を一括して改正し、11月までに順次施行される。

 2019年10月の東日本台風(台風19号)豪雨が福島、宮城両県にもたらした甚大な被害は記憶に新しい。本格的な出水期を迎えるのを前に、命と財産を守る手だてを改めて考えるきっかけにしたい。

 流域治水は雨水の貯留浸透対策の強化、下水道整備の加速、中小河川の浸水想定区域設定などハード、ソフト両面の幅広い対策を包括する。想定するのは上下流で大雨となり、氾濫が連鎖する「流域型洪水」だ。東日本台風の進路と水の流れが重なり、源流部の福島県南から河口部の宮城県南までの本支流域で氾濫が相次いだ阿武隈川の水害は典型と言える。

 関連法の眼目は、水害の危険性が高い土地の利用規制を法律で明確に位置付けたことだ。01年施行の土砂災害防止法や東日本大震災後に制定された津波防災地域づくり法には開発行為や建築を制限する特別警戒区域の規定がある。一方、津波に比べ頻度の高い河川氾濫などの水害に関しては特段の定めがなかった。

 国は1950年代から、水害発生の恐れがある場所での建築制限や市街化区域からの除外などを通知で自治体側に促してはいたが、取り組みは進まなかった。急速な経済成長に伴う開発の進展や、私権制限に対する懸念が壁になったためだ。

 こうした中、近年では16年に岩手県岩泉町、20年は熊本県球磨村でそれぞれ河川に近接した高齢者施設の入所者ら多数が浸水被害の犠牲となった。流域治水の観点からは避難計画や訓練の実効性に加え、立地の在り方も根底から考えることが教訓となる。

 国が河川防災の軸に流域治水を据えるのは初めてだが、用語自体や概念は以前からある。滋賀県は14年施行の流域治水条例で雨水の貯留浸透、中小河川や内水氾濫も想定したハザードマップの作成、そして土地利用規制までを盛り込んだ。関連法が求める諸施策は条例の内容と多くの部分で重なる。

 国も00年代前半、河川整備にとどまらない多角的な流域対策を全国の河川に展開する「総合治水」の方針を打ち出してはいた。理念的には流域治水と共通していたが、予算不足に加え、省庁間の連携や自治体との調整がうまくいかず、期待された成果を上げられなかった。

 激甚化の一途をたどる豪雨災害は、新型コロナウイルス禍でもお構いなしに襲ってくる。流域治水を単なる看板の掛け替えに終わらせないためには、今度こそ国と自治体の本気度が問われる。私たちも水害リスクへの感度を高め、備えや住まい方をいま一度、見直す必要がある。

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