仙台短編文学賞、2回分の授賞式 オンラインで開催

オンラインで受賞作の講評をする第4回選考委員のいとうせいこうさん=仙台市青葉区の仙台文学館

 仙台短編文学賞(実行委員会主催)の第4回と第3回の合同授賞式が5日、オンライン形式であった。昨年の第3回は新型コロナウイルスの感染拡大で延期されており、2回分の入賞者と選考委員ら関係者20人がリモートで参加した。

 「海、とても」で第4回の大賞に選ばれた森川樹(いつき)さん(46)=兵庫県=は宮城県女川町出身。東日本大震災の津波で母が行方不明になった女性の心の動きを繊細につづった。
 選考委員の作家・クリエーターのいとうせいこうさん(60)=東京都=は「震災の当事者だけに逡巡(しゅんじゅん)し、苦しんだと思うが、優しいタッチで書いたことに尊敬の念を持つ」と評した。
 森川さんは「つらい震災を忘れたい気持ちはあるが、目を背けていては未来や過去を全部否定するようで、それではいけないと、悔しさや悲しさ、ごちゃ混ぜの気持ちのまま書き上げた」と語った。
 第3回の大賞を受けた佐藤厚志さん(39)=仙台市=の「境界の円居(まどい)」は、震災の記憶を抱えながら気仙沼市で新聞配達をする高校生が主人公。選考した作家の柳美里さん(52)=南相馬市=は「歳月を経ても過ぎ去ることのない、震災がもたらした痛苦から目をそらさず、喪失に向かって静かに祈っているような作品」と述べた。
 佐藤さんは「震災についての小説はたくさんあるが、どこかに伝えきれていない思いや、まだ翻訳されていない感情がある。この文学賞はそれらの受け皿になる」と話した。
 実行委は出版社「荒蝦夷(あらえみし)」とプレスアート、河北新報社の3者で構成する。第5回は7月1日募集開始、11月15日締め切り。選考委員は芥川賞作家の玄侑宗久さん(65)=福島県三春町=が務める。

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