復興照らす希望の聖火 雨の中、思いつなぐ 石巻、女川
東京五輪の聖火リレーが19日、県内で始まった。石巻地方では初日、石巻市と女川町を巡り、「復興五輪」を掲げる聖火が東日本大震災の被災地を照らした。47人の走者が家族や古里への思い、支援への感謝を一歩一歩に込め、希望の火をつないだ。20日は東松島市からスタートする。
石巻市の第3区間は午後3時26分、雨が降るJR石巻駅前を出発。12人が中心市街地2.2キロを走った。
第1走者は震災で同市大川小6年だった次女真衣さん=当時(12)=を亡くした大川伝承の会共同代表の鈴木典行さん(56)。金色のトーチを掲げ、沿道の拍手に応えた。走り終えた鈴木さんは「娘の名札をポケットに入れていた。『一緒に走ったね』と抱き合いたい。遺族の自分が走ることで多くの人に関心を持ってもらいたい」と語った。
「全てを失って落ち込んだけれど、一人じゃないと気づいた」。第7走者、同市のの古沢たけ子さん(63)は、震災で夫の勝治さん=当時(67)=を亡くした。励ましてくれた職場の仲間に感謝を伝えようとランナーに応募。「夢のような時間だった。楽しく走れたと夫に伝えたい」と笑顔を見せた。
新型コロナウイルス感染拡大の不安が残る中、沿道には多くの観覧客が集まった。同市門脇の会社員木村大一郎さん(39)は「震災時に助けてくれた上司が走るので応援に来た。当時を思い出してこみ上げるものがあった」と感動していた。
第4区間は市総合運動公園周辺の1.97キロを13人がつないだ。ゴールの市民球場前でミニセレブレーションがあり、走者と伴走した同市飯野川中3年の鈴木琉生さん(14)は「人生に2度あるか分からない貴重な機会だった」と喜んだ。
聖火は第5区間から女川町入り。JR女川駅前商業エリアなど町中心部の3.8キロを22人がつないだ。ゴール後は到着イベント「セレブレーション」があり、最終走者が聖火皿に火を移した。沿道で聖火を待った女川町大道の自営業阿部直久さん(45)は「人生でもめったにないチャンスに巡り合えた」と話した。
20日は午前9時58分に東松島市のJR東名駅前をスタート。野蒜-矢本東駅間は列車で運び、市役所にゴールする。県内の聖火リレーは21日まで。