聖火リレー県内2日目 感謝や思い胸に16人駆ける 東松島



東京五輪の聖火リレーは20日、東松島市で県内2日目のスタートを切った。東日本大震災の被災者が移り住んだ、野蒜ケ丘、あおいの両防災集団移転団地を「復興五輪」のともしびが照らした。16人の走者が支援への感謝や、家族への思いなどを掲げて走り、再建への歩みを進めるまちの姿を国内外に発信した。
野蒜ケ丘地区は午前9時58分にJR東名駅前をスタートし、8人が大通り1・5キロを走った。
第1走者を務めた同市矢本の会社員相沢一志さん(27)は、就学前に耳がほとんど聞こえなくなり、補聴器を付けて生活している。宮城水産高でラグビーを始め、聴覚障害者による7人制ラグビー(デフラグビー)の日本代表に選ばれた。「沿道の方々に感謝を込めて手を振った。パラリンピック種目に選ばれるよう全国に発信したい」と語った。
第6走者のフラワーアレンジメント講師大場裕美子さん(62)=同市大曲=は6年前、一緒にマラソン大会などに参加してきた夫の秀範さん=当時(60)=をがんで亡くした。「夫が見守ってくれていると思って走った。家族や友人が駆け付けてくれ、泣きそうになった。本当に楽しい時間だった」と振り返った。
JR野蒜駅から東矢本駅までは、津波で甚大な被害を受け、一部区間を高台に移設して2015年に全線で運行を再開した仙石線の列車で運んだ。矢本地区は市役所までの1・5キロを8人がつないだ。
■語り部・武山さん「トーチは地元に」
東矢本駅前から走った東京福祉大3年武山ひかるさん(20)=群馬県伊勢崎市=は、大曲小4年の時に震災に遭い、大曲浜にあった自宅は全壊した。進学後も語り部活動を続けている。「沿道の人たちが名前を呼んで応援してくれてうれしかった。トーチは地元の人たちが見られるように、あおい地区の集会所に置いてもらいたい」と語った。
両地区のスタート時には、それぞれ宮野森小と赤井小の児童が太鼓を演奏し、盛り上げた。長男が演奏に参加した東松島市野蒜の会社役員二宮幸さん(44)は「震災から10年の節目に、聖火が被災地を巡りつながっていくんだと実感した」と話した。
■青いこいのぼり舞う あおい地区
ルートになった東松島市のあおい地区では、住民や有志グループが「復興五輪」にふさわしい応援の在り方を考え、準備してきた。毎年、震災犠牲者の慰霊と子どもたちの成長を願って飾り続けてきた青いこいのぼりを沿道に掲げ、ランナーを迎えた。
沿道の公園に「青い鯉(こい)のぼりプロジェクト」が長さ1~2メートルのこいのぼり100匹を掲げ、参加する和太鼓グループのメンバー約25人が演奏。地区の住民たちは、毎年春に各世帯で飾る長さ約80センチの青いこいのぼりを持って応援した。
こいのぼりを手に沿道で聖火を見届けた無職佐藤貞志さん(80)は同市大曲浜地区で被災し、あおい1丁目に自宅を建てた。「再建したまちの中を聖火が通ってくれてうれしい。全国に復興した姿をアピールできたら」と話した。
あおい地区会の小野竹一会長(73)は「新しいまちが一つになり、追悼の意味を込めた応援の在り方を考えた。みんなが協力してくれて『復興五輪』らしさを発信できたのではないか」と語った。