コチョウラン、津波に負けず 石巻の奥田さん「亡き長男からエール」
石巻市あけぼの2丁目の奥田美由紀さん(57)方のコチョウランが見事な花を咲かせている。東日本大震災で津波をかぶり、枯れてしまうことも心配されながら咲き続け、震災から10年の今年は「これまでで一番」という美しさだという。昨年10月に長男を病気で亡くした。奥田さんは「天国の息子から届いたエールではないか」と語る。
震災から間もなくして同市穀町にある生花店に立ち寄った際、津波をかぶって廃棄される直前のコチョウランを見つけた。
趣味でコチョウランを育てていた奥田さんはかわいそうに思い、店にかけあって10鉢ほどを譲り受けた。汚れた部分を取り除き、丁寧に植え替え、日当たりの良い窓辺に置いた。いくつかは順調に育ち、新しい芽を出した。
毎年、白やピンク色の花を咲かせ、病気で寝たきりとなって自宅で療養していた長男の目も楽しませてきた。今年は1月から咲き始めた。例年は1本の茎に一つ花を付ける程度だったが、どうしたことか六つも七つも鈴なりに咲き、重そうに頭を垂れた。
咲き誇る花は31歳という早すぎる息子の死の悲しみを慰めてくれた。「『お母さんも俺に死なれてつらいだろうけど、これを見て元気を出して頑張れ』-。そんな息子の声が聞こえてくるようだった」と話す。
花を譲った「フラワースペースお花屋さん」は、「当時は寒さも厳しく状態は悪かった。手入れがよほど良かったのではないか。枯れる運命にあったのに幸せな花だ」と喜んだ。
「息子を育てた証し」として、発達障害がある人の支援に当たる「発達支援教育士」の資格を取得した奥田さん。介護経験と合わせ、「障害がある子どもや親たちの助けになりたい」と笑顔で話した。
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