伝えたい命の大切さ 震災遺構大川小、一般公開始まる 石巻市
東日本大震災の津波で児童74人、教職員10人が犠牲になった石巻市旧大川小の教訓を伝承する「市震災遺構大川小学校」の一般公開が18日、始まった。津波に破壊された旧校舎をそのまま保存し、被災当時の状況や津波訴訟の記録を展示する施設を整備した。命の大切さや学校防災の在り方を伝えていく。
震災遺構の敷地面積は約3・35ヘクタール。校舎には立ち入りできず、校庭だった場所などから津波の爪痕を残す教室内部などを見学する。校舎西側には慰霊と追悼の広場を設けた。
展示施設「大川震災伝承館」は木造平屋で延べ床面積約300平方メートル。地震発生から津波襲来までの児童らの動きや、学校側の事前防災の不備を認めた津波訴訟の経緯や判決内容をパネル展示。大川地区の震災前の街並みを再現した模型も設置した。
開場式が現地であり、遺族や関係者約80人が出席。斎藤正美市長は「二度と同じような犠牲を出さぬよう、津波の恐ろしさや学校防災の在り方を自分ごととして考えてもらう場にしたい」と語った。
公開初日から多くの市民が訪れた。児童遺族らでつくる「大川伝承の会」は語り部活動を実施。共同代表の鈴木典行さん(56)は「学校管理下でなぜ多くの犠牲が出たのか。学校防災を学び、考え、持ち帰って家族らに伝えてほしい」と呼び掛けた。
校舎保存を巡っては遺族や市民の賛否が割れ、時間をかけて議論が進んだ。市は保存の是非を問うアンケートや公聴会も実施し、亀山紘前市長が2016年3月、校舎実物を残す意義を重視し、保存する方針を表明した。
市は17年7月、遺構整備方針を策定。19年10月には、津波訴訟で学校と市教委の過失を認定する仙台高裁判決が確定した。市は20年4月に整備工事に着手。遺族と展示内容を協議してきた。