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震災後回収 の「観音像」、私設遺構館に安置 石巻・鹿又

南浜地区で拾得した観音像を見る高橋さん

 石巻市築山1丁目の自営業高橋力蔵さん(75)が同市鹿又で運営する東日本大震災の遺構館「きぼう館」に、津波で大きな被害を受けた同市南浜町で回収した観音像がこのほど安置された。津波で流れ着いたと思われ、放置状態が続いたことから高橋さんが引き取った。修復して台座を付け、震災から10年の月日を経て、安置にこぎ着けた。「優しい面立ちの観音様なので、いつでも見に来てほしい」と話す。

 観音像は石造りで高さ62センチ。高橋さんが観音像を見つけたのは震災から1年後の2012年春。南浜町の県道石巻女川線(通称・八間(はっけん)道路)そばで、雑草が生え始めた土に半分埋もれていた。うつぶせ状態だったので、掘り出し、汚れをぬぐい、道路脇に立てた。

 その後4年ほど、地域の復旧を見守っていたが、台座がなかったこともあり、16年春ごろまでには横倒しとなり、しばらく放置状態が続いた。見るに見かねた高橋さんは引き取りを決意。しかし直後の7月、病気で妻の元美さん=当時(65)=を亡くし、どう安置すればいいか悩んだという。

 震災から10年、妻を失って5年となる今年、きぼう館の玄関前に安置することを決めた。汚れが取り切れなかったことから白で塗装し、石巻市内の業者に依頼して台座を取り付け、「南浜町観音像」と名付けた。

 高橋さんは「石巻の被害、その後の復旧を見守ってきた観音様。これからの復興にも寄り添ってほしい」と手を合わせる毎日だ。

 きぼう館は同市門脇町や南浜町で収集した漁具や食器、旧門脇保育所の看板など震災の遺物を展示。昨年、国などで構成する震災伝承ネットワーク協議会の震災伝承施設に登録された。

 館内見学は、高橋さんの立ち会いが必要だが、観音像は玄関先の庭にあり、手を合わせることができる。 連絡先は080(1818)5390。