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画歴1ヵ月で全国絵画展入選 遠洋マグロ船元漁労長、退職機に絵筆握る

宮城水彩展に入選した「中里川」を披露する和田さん
日本の自然を描く展で入選した「宮城県気仙沼市大島龍舞崎の浜」

 退職を機に絵筆を握った石巻市中里7丁目の和田正弘さん(68)が、画歴1カ月で全国公募の絵画展に入選した。遠洋マグロ船の元乗組員で、昨年までは半世紀にわたり世界の海で魚を追っていた。初出展で入選を果たした和田さんは「これからも古里の原風景を描きたい」と意欲を燃やす。

 絵画展は公益財団法人日本美術協会上野の森美術館などが主催する「第34回日本の自然を描く展」。全国のプロやアマチュアから2619点の応募があり、1859点が入選した。和田さんは気仙沼市大島の龍舞崎(たつまいざき)を描いた水彩画が選ばれた。

 和田さんは昨年、マグロ船の漁労長を退職した。以前から興味があった日本画の講座を市報で見つけ、今年1月に初めて参加。教室は月に1回程度しかなく、受講用に買った水彩絵の具がもったいないので静物画や風景画を始め、1カ月後に描いたのが龍舞崎の作品だった。

 絵を習った経験はないが、筆を持つと迷わず手が動いたという。見たままの景色を描こうと心掛け、木や岩の質感も意識した。「手を入れるほど絵が良くなり、どんどん楽しくなった」と話す。

 周囲の勧めもあって出品したところ、5月末に入選の結果が届いた。「自己流なので評価を知りたかった。うれしかった」と喜ぶ。6月にあった第56回宮城水彩展(宮城水彩画会主催)でも、地元の中里川を描いた作品が入選した。

 和田さんは石巻市網地島出身。10代で船に乗ってからはずっと大西洋や地中海などを巡っていた。「海の上で素晴らしい景色を見てきた。光や波、雲の描き方に生かされたかもしれない」と言い「200キロのマグロを釣り上げた光景もいつか描きたい」と笑う。

 今後は日本画を中心に描いていくという。東日本大震災で被災した石巻地方は、復興の進展で景観を大きく変えた。和田さんは「身近にもきれいな景色はたくさんある。今の風景を描き残したい」と語る。

 自然を描く展は28日~9月1日、仙台市青葉区のせんだいメディアテークで仙台展も開かれる。

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