河北春秋(8/15):中学生だった作家の故小松左京さんはがりが…

 中学生だった作家の故小松左京さんはがりがりに痩せていた。終戦までの2年半は殴られ、空腹だった覚えしかないという。76年前のきょうは軍需工場に動員され、5人乗りの本土決戦用特殊潜水艇を造っていた▼午前中の作業が終わり、皆がラジオに聞き入った。生徒の一人が「(ポツダム宣言の)受諾と聞こえました。日本が負けたんやないですか」と言うと、担任教師に引っぱたかれ鼓膜が破れた。「本当にバカげた話だ」。半生をつづった『SF魂』にある▼解放感はあったが、湧き上がる感情は複雑だったようだ。「戦闘を経験していない後ろめたさに落としまえをつけながら書く」との記述が強烈だ。年齢が少し上の先輩たちは特攻を強いられた。犠牲になった同世代への思いが心の底に沈んでいたように映る▼1963年発表の『地には平和を』。あの日に戦争は終わらなかったという時間軸で泥まみれになる自分を描いた。もし戦場に立たされていたら…。自身の切実な歴史をSFの手法で書いた。戦争への小松さんなりの筋の通し方だったのだろう▼「あの絶望的な日々は忘れることができない」と戦禍を振り返り「SFとは希望である」と記す。『地には-』の最後には日常的な戦後の家庭が描かれる。平和を願う心が胸にしみる。(2021・8・15)

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