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五輪・パラ大会旗掲揚 女川出身の陸上自衛官・井口さん、大役担う

本番に向けて練習する井口さん(陸上自衛隊提供)

 日本勢のメダルラッシュに沸いた東京五輪と24日に開幕したパラリンピックで、女川町出身の陸上自衛官井口秀美さん(32)が開閉会式の大会旗掲揚を担っている。世界屈指のアスリートが集い、東日本大震災の復興五輪を理念に掲げた祭典を支える重要な「任務」に気を引き締める。

 掲揚は9人一組で担当。井口さんは7月23日と今月8日に国立競技場であった東京五輪の開閉会式で掲揚台に立った。9月5日のパラリンピック閉会式でもパラ旗を掲揚する。実際に旗を上げ下げする役割を果たし、「緊張したけれど、納得のいく掲揚と降下ができた。大会に携わることができて幸せだった」と東京五輪を振り返る。

 五輪旗や国旗の掲揚を自衛隊員が担うことになった際、井口さんは被災地出身者として復興五輪に携わりたいという思いと、女性活躍の観点から志願した。

 練習は7月中旬に始まり、「世界から見られている」という意識で個々の動作の美しさはもちろん、一人一人の動きを合わせた。旗は上下を確認して地面に付けないよう注意し、50秒間の曲に旗を動かすタイミングを合わせる。普段から国旗掲揚の任務はあるが、細かく決まった時間で調整するわけではないため曲を繰り返し聴いた。

 井口さんは女川町黄金地区出身。女川一中、石巻市女商高(現石巻市桜坂高)を卒業後、陸上自衛隊に入隊した。現在は東京の練馬駐屯地で行政文書の作成や保管、隊員の教育などを担う。

 八戸駐屯地で勤務していた10年前、古里を震災の大津波が襲った。町立病院(現町地域医療センター)近くの実家は全壊。家族は無事だったが、全員の安否が確認できなかった時期も岩手県で災害派遣に当たった。「家族が犠牲になったかもしれないと頭をよぎったけれど、無事を信じていた」という。

 「震災のことを忘れてほしくない」と願う井口さん。引き続き大役を担うパラリンピック閉会式に向け、「日本と自衛隊、被災地の代表という気持ちで、恥のない掲揚をしたい」と力強く語った。

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