河北春秋(9/9):子どもの頃、テレビの洋画劇場に映る「声の…

 子どもの頃、テレビの洋画劇場に映る「声の出演」のチェックを欠かさなかった。いずれも声優界の草分けたち。印象深かった一人が『荒野の七人』や『大脱走』の故ジェームズ・コバーンさんの吹き替え。小林清志さんが声を当てた▼東京生まれの88歳。学生時代に演劇を志し舞台劇の翻訳にも携わった。はまり役をつかんだのは1971年。『ルパン三世』の主人公ルパンの相棒・次元大介。帽子を目深にかぶりマグナムを構える。渋い低音と相まってとにかく格好いい▼宮崎駿監督の『カリオストロの城』。ヒロインのクラリスを追っ手から助ける有名なカーチェイスのシーン。次元とルパンのやりとり。「どっちに付く?」「オンナぁ」「だろうな」。軽妙な掛け合いも見せ場だった▼「彼の持つ豪放磊落(らいらく)、男性的な魅力が役にぴったりだった」。声優仲間の故勝田久さんが『昭和声優列伝』に記している。ルパンファミリーの中で唯一、第1作からの50年を欠かさず演じてきたが、10月開始の新作で交代する▼役に人生を重ねるように言葉を寄せた。「ルパンは俺にとって一生ものの仕事であった。命を懸けてきた。次元はそんじょそこらの悪党とは違うぞ。ルパン、俺はそろそろずらかるぜ。あばよ」。江戸っ子らしい小粋な余韻を残した。(2021・9・9) 

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