「次代漁業につなぐ」 石巻専修大・追波湾で海洋環境調査
石巻専修大理工学部生物科学科(海洋生物コース)3年生の海洋生物学実習が石巻市北上町十三浜の追波湾内であり、太田尚志教授(農学博士)が学生23人と湾内に生息する生物の採集を含む海洋環境観測調査を実施した。調査は今後も継続する方針で「次の世代の漁業につなげられるようデータを蓄積し、追波湾の海洋環境変化などを明らかにしたい」と話している。調査は地元北上町十三浜のワカメ養殖業者や水産加工販売業者からの「海の環境について詳しく知りたい」という相談に応えた。
プランクトンの専門家でもある太田教授は「三陸沿岸は基本的に外洋水の影響を受ける海域だが、北上川を控える追波湾は河川水が多く流れ、環境の多様性が高い可能性がある」と指摘する。
追波湾は、女川湾や志津川湾などに比べ、海洋環境観測調査の実施は極めて少なかったという。温暖化に伴う水温の上昇などで、最近は南方系のタチウオなどが漁獲されるようになった。
「こうした環境の変化などを背景に、次世代を見据えた持続可能な漁業を考えたいという生産者の意見に共感した。研究者としても興味深いテーマだ」と、北上町在住でもある太田教授は強調する。
大指漁港から2隻の小型漁船に分乗した学生は、ネットを使って海中のプランクトン採集をはじめ、専用の機器で、水温・塩分・酸素濃度、濁度などのデータを集めた。
学生自らが漁船や漁港岸壁で釣り上げたアジやイナダ、メバル、クロソイなども実習室で解剖。プランクトンの種類を調べた。
学生の内城温人さんは「潮の流れが強い一方、塩分濃度や水温の違いによって生じる大きな潮目が見られた。解剖したアジからオキアミが取れて食物連鎖を感じた」と語った。
土屋達彦さんも「動物プランクトンの9割がカイアシ類だったが、釣魚(アジの幼魚)の胃の内容物から検出されたのは、ほとんどが2枚貝の幼生。アジの摂餌選択に興味が湧いた」と感想を述べた。太田教授は「5~10年のスケールで継続して調査することが重要」と話した。