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「やっと戻れた」 女川の焼鳥店、10年半ぶり町内で再開

新たな店舗で焼き鳥を焼く文男さん

 東日本大震災で被災し一時仙台市内で営業していた女川町の焼鳥店が、約10年半ぶりに再び町内で営業を始めた。中華料理もメニューに加え、「やきとりぶんぶん 杜華(とうか)」としてオープン。震災後に整備されたJR女川駅前のテナント型商店街「シーパルピア女川」に入り、再開を喜ぶかつての常連客らを迎えている。

 女川町出身の店主紺野文男さん(65)は仙台市内で会社員として働き、早期退職して元々好きだった焼き鳥の店を2000年に開いた。町地域医療センター(旧町立病院)近くで営業していたが、震災の津波で店舗が流失。店舗とは別の場所にあった自宅も全壊したため、妻の杜華さん(58)と仙台に引っ越した。

 文男さんは震災の翌年、仙台市内で焼鳥店を再開。中国出身の杜華さんは15年に中華料理店を始めた。それぞれ店を構え、16年以降は中華店のみの営業に切り替えた。

 「いつかは女川に帰りたい」と考えていた文男さんは、かさ上げされた町内の自宅跡近くに今年3月、自宅を再建した。女川か石巻で店の再開を模索し、シーパルピアのテナントの空き情報を聞いて町内での再開を決意。仙台の中華料理店は知人に引き継ぎ、8月2日に町内で開店した。

 震災前は店内飲食のほかテークアウトも人気で、手土産に買う人も多かったという。夜営業を中心に提供する焼き鳥は炭火でじっくりと焼き、ねぎまが一番の看板メニュー。自家製のたれは震災前と同じレシピで作る。

 杜華さんが手掛ける中華料理は昼夜通して提供し、ニラレバやマーボー豆腐といった定食や点心などをそろえる。杜華さんは「夜は焼き鳥をはじめ、麺類やご飯物など締めに食べられるメニューも用意している」と話す。

 オープン後、震災前からの常連客には「ぶんぶんの味」との再会を喜ぶ人も多い。「やっと女川に戻ってこられた」と言う文男さんは「待ってたよと言ってくれる人もいてうれしい。新型コロナウイルスが落ち着いたらわいわい楽しめる店にしたい」と意気込む。

 焼き鳥は平日の夜、土日祝日は昼夜ともに提供。定休日は当面、月、木曜日。

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