動物の路上死や魚食減少、地域課題解決へ 石巻専修大で成果発表
石巻専修大の共創研究センター研究成果報告会が17日、同大4号館であった。地域自治体や企業と緊密に連携し、地域課題の解決に向けて研究活動に取り組んでいる教授や准教授、助教の9人が2020年度に実施したプロジェクトについての成果を発表し、聴講した市民ら約80人の関心を集めた。
理工学部生物科学科の辻大和准教授は、道路上で起こる野生動物の死亡事故で全国的な問題になっているロードキルに着目。「石巻圏内における野生動物のロードキルの現状調査」について説明した。
20年4月から今年3月にかけての調査を踏まえ、環境要因や動物の生活史との関連性について言及。「石巻市では1014件のロードキルが記録され、タヌキ、ネコ、シカで全体の約75%を占めた」と話した。
その上でタヌキは西部、ネコは中央部、シカは牡鹿半島で多かったといい、「いずれも標高が低く市街地の近くで多く事故に遭うという共通点があったが、それ以外は異なる傾向を示した」と指摘した。
このうち、シカについては牡鹿半島に集中していることを強調。効果的な対策として「看板設置などが必要で、今後市に提案できればと思っている」と語った。
「石巻圏域の特産品・海苔(ノリ)の知名度を向上させるための実証的研究」をテーマに発表したのは経営学部の李東勲教授。食生活の多様化や食の簡便化、即食化などで家庭内の魚介類の消費の落ち込みが著しい現状を報告した。
ノリについては「皇室に献上されている物もあるが、商品価値は薄れている」と訴えた。さらに「つくだ煮、おにぎり、すしなど江戸時代から今日に至るまで約200年間食べ方が変わっていない」と強調。知名度向上や消費拡大のためには、新しい発想による新商品開発の必要性を説いた。
具体的には、ノリの栄養素(葉酸、ビタミン、植物繊維)に、梅を加えることで美容効果を増大させるという「梅海苔ペースト(仮称)」の商品化を11月下旬に予定していることも報告した。
出席者が熱心に質問する場面も見られ、研究活動に対する関心の深さがうかがえた。