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葉物野菜を無人で栽培 来年、新工場完成 東松島ファーム

関係者が工事の安全を祈った起工式=7月27日

 東日本大震災で被災した東松島市の旧浜市小で葉物野菜を水耕栽培する「東松島ファーム」は、栽培工程を無人化した工場を体育館内に新設する工事を進めている。無人化した植物工場は全国でも珍しく、生産量の拡大と併せ、生産技術を国内外に発信するショールームとしても活用する方針。来年2月に完成予定。

 体育館内に床面積435平方メートル、高さ6メートルの栽培室を新設する。8段の栽培棚を設け、発光ダイオード(LED)を光源にレタスやベビーリーフなどの葉物野菜を水耕栽培し、年間約150トンの生産を目指す。

 種を植えて苗を育てる作業は手作業で行い、旧校舎の教室に専用室を設ける。校舎と館内の栽培室をベルトコンベヤーでつなぎ、苗を植えたトレーを自動で運ぶ。定植から収穫まで触れることなく栽培でき、トレーの洗浄など手間がかかる維持管理業務も自動化し、省力化する。

 無人化に伴う総事業費は4億5000万円で、3分の1は国の津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を活用する。旧体育館と旧校舎は市が無償譲渡し、敷地は2027年3月まで無償で貸与する。

 栽培室内での水耕栽培は、異物混入のリスクが小さく、付着する雑菌が少ない。洗わずに食べられる上、日持ちがすると消費者や外食産業からの需要が大きい。天候に左右されず通年で計画的に生産でき、農業の労働力不足の解消も狙う。野菜が育ちにくい環境でも栽培できるため、同社は国内外に技術を普及させたい考えだ。

 東松島ファームは16年4月に設立。旧校舎の一部を活用し、地元雇用を含む従業員9人で年間約10トンのベビーリーフやレタスを水耕栽培し、東北のスーパーを中心に出荷している。新工場の稼働後は、正社員、パート共に地元雇用を増やす。

 阿部基教(もとのり)社長(33)は「自然災害の影響を受けず、衛生的に安定出荷できる植物工場は、新型コロナウイルスの感染拡大で注目度が増している。復興のシンボルとして、最新技術を世界に発信する拠点にしたい」と意気込む。

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