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企画特集>学ラボ 石巻専修大・研究室だより

辻大和准教授(つじ・やまと):1977年、北海道釧路市生まれ、富山県高岡市出身。東大農学部卒、東大大学院農学生命科学研究科修了。京大霊長類研究所助教、中京大非常勤講師を経て2020年4月から現職。気分転換はウクレレ演奏。石巻市内で妻、長女、長男と4人暮らし。
遠藤郁子教授(えんどう・いくこ):1972年、神奈川県生まれ。専修大大学院文学研究科博士課程修了。文教大非常勤講師などを経て2014年4月に石巻専修大特任准教授、20年4月から現職。仙台市在住。気分転換は海外ドラマの鑑賞。最近見た「THIS IS US」が面白かった。

 石巻専修大(石巻市南境)には86人の専任教員がいる。どんな思いで研究や学生への指導に当たっているのだろうか。「学(まな)ラボ」初回は、理工学部生物科学科の辻大和准教授と人間学部人間文化学科の遠藤郁子教授に聞いた。(月1回掲載)

理工学部生物科学科・辻大和准教授

<自然界の謎を解く楽しさ>

 動物生態学が専門。現在は「種子散布」の研究に力を入れる。動物のフンから植物のタネを採り、発見場所を分析して動物の行動や植物との関わりを解明する。

 「動植物は理由なくそこに生息していない。分布や数、行動が他の生き物に影響を与え、時には影響を受け、全体のバランスを保つ。研究者としてバランスの取れた環境維持へ提言することを心掛けたい」

 約20年の研究人生は石巻市牡鹿半島の金華山での調査歴と重なる。東大3年の時に初めて訪れ、ある光景に心を躍らせた。観察中のサルがいる桜の木の下にシカが集まり、上から落とす葉や花を奪い合うように食べた。「木の上のサルと地上のシカが植物を通じてつながる。面白い」。100回以上、島に足を運んだ。

 研究者人生と成果を著書「与えるサルと食べるシカ」(地人書館)にまとめた。「自然界は私たちの知らないことであふれている。素直に自然を見て学ぶことを教わった」

 1年生の生物学、3年生の野生動物管理学の講義を担当し、来年度は生態学も受け持つ。先日はニホンジカの骨の提供を受け、学生と全身骨格を組み立てた。学内の展示室に飾られている。「学生たちのやりがいにもつながると思う」

 フィールドワーク(野外調査)を何より大事にする。大学裏のトヤケ森は最も身近な調査地。カモシカ、ハクビシンといった13種類のほ乳類やヤマドリ、カケスなど11種類の鳥類がすむ。

 秋には新たな研究を始める。使うのはトヤケ森で採集した大量のクルミ。中に磁石を入れてセンサーカメラの前に置く。リスやネズミが元の場所からどのぐらい運ぶかを金属探知機で調べ、動きを突き止める。

 「フィールドワークには根気と粘り強さが必要。学生には実験室で本を読むだけでなく、どんどん外に出て、作業を通して自然界の謎を解く楽しさを学んでほしい」

人間学部人間文化学科・遠藤郁子教授

<好きなことを突き詰める>

 日本の近現代文学を中心に、文字に関わる芸術表現を研究する。何が表現され、人々がどう受け止めているか。対象は小説や詩歌にとどまらず、漫画も入る。

 特に注目するのは東日本大震災後の女性作家の作品。「書き手が表現を変えたり、書けなくなったり。立ち直るときにも影響を受けている。他国の文学にはない新たな表現といえる作品が現れている」

 7月の日本近代文学会東北支部夏季大会で発表したのは、村田沙也香「地球星人」の考察。主人公が現代社会のひずみの中で限界集落に逃げ込み、生き延びるために宇宙人になる話だ。

 「震災を直接描いてはいないが、弱者に対する疎外を強める震災後の現実と感覚が重なる。現代の厳しい状況とどう対峙(たいじ)し、サバイバルできるかが問われている」

 故石ノ森章太郎の「萬画」の受容と石巻地域との関わりを題材にした論文も手掛けた。キャラクター設定の背後にオリジナルの物語があることの大切さを指摘。石ノ森萬画の受容層を開拓する試みとして、お薦め本の魅力を語り合う「ビブリオバトル」に一定の有効性があると提案した。

 「文学はマスメディアに乗らない個人の葛藤や生きづらさをすくい上げて読者に体感させ、寄り添ってくれる。その部分を研究者として引き出したい」

 研究の出発点は専修大大学院時代、佐藤春夫(1892~1964年)の小説に関心を抱いた。「詩歌や絵画も手掛け、文学の自由さを体現した人。一貫しない多面的な存在、それが人間かなと思わされた」と振り返る。

 「日本文学への誘(いざな)い」「日本文学論」「日本文学研究」などの講義を受け持つ。「文学は思考の器とも言われる。好きなことを突き詰めればそこから考えを深め、広い社会を見渡していける。学生には最初にその対象にひかれた気持ちを大切にしながら、興味や関心を広げてほしい」

石巻かほく メディア猫の目

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