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衆院選・宮城5区 震災とコロナ、災禍の中で(上) 被災企業の二重ローン

多くの水産会社が立ち並ぶ石巻市魚町

 衆院選は31日の投開票に向けて各党が論戦を展開している。東日本大震災からの復興が道半ばの石巻地方でも、新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がる。産業再生や福祉分野の担い手不足など、二つの災禍の中で深刻化する地域の課題を探った。

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<返済本格化、期限延長を>

 新型コロナの感染拡大が経営を圧迫する中、震災の被災企業は再建費用の返済と震災前から抱える債務の二重ローンに頭を抱えている。

 「返済が重荷になり、このままではもちこたえられないという会社が出てくる」。水産加工業者などでつくる石巻魚市場買受人協同組合の布施三郎理事長(71)は危機感を募らせる。

 震災後、販路喪失や東京電力福島第1原発事故の根強い風評被害、サンマなど主力魚種の漁獲不振などにさらされてきた。感染拡大による外食需要の低迷などが追い打ちを掛け、震災前の売り上げに届かないままの企業が多い。

 多くの企業は事業再建に国のグループ化補助金などの支援を活用し、自己負担分は無利子の「高度化資金」を充てた。返済期間は20年。5年の据え置き期間を経て、返済が本格化している。

 震災前から抱えていた債権は、中小企業の二重ローン対策を担う「東日本大震災事業者再生支援機構」の買い取り支援を受けた。こちらも15年以内に償還が必要で、コロナ禍の苦境で負担が重みを増す。

 再建当時の事業再生計画通りに売り上げを伸ばせず、資金繰りに行き詰まり、返済の一時猶予を受けるケースも出ている。しかし、最終的な期限の繰り延べは認められていない。後々の負担が重くなるだけで、根本的な解決にはつながっていない。

 布施理事長は「業界として石巻での水揚げが増えているブリなど、新たな魚種に対応していこうとしているところ。さらに5年チャンスがほしい」と、国に返済期限の延長を求める。

 支援機構によると、9月末現在の支援決定件数は県内で346件。うち事業再生が完了したのは84件と、24%にとどまる。石巻市内では108件が支援を受けており、多くの企業でこれから償還が本格化する。

 石巻商工会議所には、新型コロナの影響でさらに厳しい状況に追い込まれた被災企業から、高度化資金や支援機構への償還に関する相談が増えている。商議所は26日、地域の金融機関などと連携協定を結び、中小企業の経営支援を強化する。

 高橋武徳専務理事(68)は「企業の倒産は人口流出などを招き、地域全体の衰退にもつながる。二重ローンは多くの企業が抱える地域の課題だ。返済期限の延長を国に粘り強く求めていく」と力を込める。

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