デスク日誌(11/2):八甲田のダム

 伊東潤さんの「囚(とら)われの山」は「八甲田山雪中行軍遭難事件」の背後に隠された謎を雑誌記者が追うミステリー小説。極寒の描写に迫力があり、無念の死を遂げた隊員らの行動を追体験している気分になる。

 遭難事件の現場付近で、治水を目的とした「駒込ダム」の工事が進む。事件の舞台に少しでも近づきたいと先日、青森県が開いた報道関係者向けの現地説明会に参加した。

 行軍ルートと重なる県道から専用道路が設けられている。工事事務所で車を降り、崖のような斜面を足を滑らせながら駒込川まで歩く。ダム予定地のすぐ下流が隊員たちが迷い込んだ「鳴沢」だと職員が教えてくれた。

 本体工事は2年前に始まり、今は川の流れを変える排水トンネル工事などが行われている。積雪が5メートルにもなるため、冬期間は工事ができない。その間、職員は積雪状況を調べるため、ひと月に1度、県道から歩いて現場を訪れるという。

 完成は10年後の2031年度の予定。駒込側上流には隊員らが目指した田代温泉がある。今は廃虚となった温泉もダム湖の底に沈むことになる。
(青森総局長 大友庸一)

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