石巻にエラブウミヘビ 黒潮に乗る? 発見者「海の環境変化心配」
石巻市の海運会社に勤務する石森利典さん(47)が、同市西浜町で船の係留作業中に海面に首を出して泳ぐしま模様のウミヘビを発見した。石森さんは「石巻出身で、海で30年仕事をしているが初めて見た」と驚き、三陸河北新報社に情報を寄せた。石森さんが撮影したヘビの画像を研究機関に送り、見解を聞くと、熱帯から亜熱帯の温暖な海域に生息するコブラ科エラブウミヘビ属の「エラブウミヘビ」と分かった。(嶋田夕子)
ウミヘビが見つかったのは10月12日。体長80センチで、幅は2センチ程。沖縄県の一般財団法人沖縄美ら島財団総合研究センターでウミヘビの生態を研究する笹井隆秀さん(33)によると、エラブウミヘビの分布の北限は、石巻から1000キロ以上南下した鹿児島県硫黄島だという。「黒潮に乗って流され、生息域を出たのではないか」とみる。
その理由について(1)孵化(ふか)は3~5月ごろと考えられるが、大きさから今年石巻でかえった個体ではない(2)去年以前に生まれたとしても寒さで越冬できない(3)腹にふくらみはなく産卵を控えた雌でもない-と繁殖の形跡がないことを挙げた。温暖化で分布北限が広がった可能性を聞くと「ゼロではないが、材料が少なく、判断できない」と話す。
エラブウミヘビは沖縄では「イラブー」と呼ばれ、郷土料理の食材として使われる。おとなしい性格で地元の人は素手で漁をするが「猛毒があり、かまれると命の危険もある。見つけてもむやみに触らないで」(笹井さん)と呼び掛ける。
石森さんに報告すると、「近年、サンマやイカが取れなくなった。(南方の)ウミヘビがいたのも環境変化の表れではないかと心配だ。東日本大震災、新型コロナウイルス、温暖化と、地元漁業をとりまく環境は厳しい」と懸念した。
石巻市渡波の県水産技術総合センターにも見解を聞いてみた。担当者は「近ごろ、石巻近海で南方系の魚が水揚げされている。黒潮の流れが強い」と話し、笹井さん同様、流されてきたとの見方だった。記録が残る震災以降、石巻地方の沿岸でウミヘビの目撃情報は寄せられていないという。