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女川原発再稼働「地元同意」から1年 避難の確実性、まだ遠く

女川町浦宿浜地区の国道398号。道幅が狭くカーブも多い

 村井嘉浩知事が東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)再稼働の前提となる「地元同意」を政府に伝えて18日で1年がたった。同意手続きで国や県は重大事故への備えに「不断の改善に取り組む」と強調した。避難道路整備に向けた動きなどは見え始めたが、確実に避難できる環境にはまだ遠く、住民の不安は変わっていない。

 女川町と石巻市で10月、重大事故時の主要な避難道路となる国道398号石巻バイパスの未整備区間に関する説明会があり、県が新ルート案を住民に示した。

 案は石巻市真野地区と女川町浦宿浜地区を結ぶ全長約6.5キロで、山側にトンネルを掘る。予算措置はされていないが、実現すれば何度も冠水被害に見舞われてきた脆弱(ぜいじゃく)区間を迂回(うかい)できるようになる。

 町建設課の担当者は「国道398号が通れなくなると町は孤立状態になる。整備されれば、町から出られないという精神的な圧迫感も緩和される」と強調する。

 石巻市では、市議会が県に避難道路として強化を要望した牡鹿半島を横断する大谷川浜-小積浜区間の県道整備の設計が進む。着工時期は決まっていない。県道石巻鮎川線の風越道路の改良は風越トンネルより石巻側の2期工事が進行中で、鮎川側の3期工事も事業化が検討されている。

 原発30キロ圏内の約20万人が県内31市町村に逃れる広域避難計画を巡っては、県は避難経路や避難先が分かる地区ごとのパンフレットを制作し、年明け以降に対象全戸に配布する方針。新型コロナウイルスの影響で延期されていた国との初の原子力総合防災訓練は、年度内に実施される見通し。

 ただ、地元同意から1年が経過しても、計画の妥当性を否定する住民の声は後を絶たない。石巻市民17人は計画に実効性がないとして再稼働の差し止めを求める訴訟を起こした。8日にあった第1回口頭弁論で、原告代表は「机上の計画でしかないことは明らかだ」と主張した。

 5日に原発が立地する石巻市牡鹿地区で開かれた「動く市長室」でも、住民が不安を市長に直訴した。寄磯地区の男性は「避難先の大崎市まで3、4日もかかるかもしれない計画は納得いかない」と強調。三陸沿岸道を使える仙台方面への避難先変更を求め、「住民の考えを聞いて見直してほしい」と訴えた。

 斎藤正美市長は「理不尽な部分が多くある」と同調し、「見直していく準備をしている」と語った。

 2号機は昨年2月、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査に合格。国は村井知事に同意を要請した。住民説明会が開かれ、地元議会は賛成の請願や陳情を採択。知事は立地2市町との協議を経て昨年11月11日に同意を表明し、同18日に経済産業相に伝えた。東北電は2022年度以降の再稼働を目指して安全対策工事を進める。