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北限のオリーブ 石巻のパン工房、生地に練り込む 古里思い商品化

石巻市雄勝町で栽培されたオリーブ入りのパンと小野寺さん

 石巻市千石町の「パン工房feeL@カフェ」が、東日本大震災で甚大な被害を受けた同市雄勝町で栽培された「北限のオリーブ」を使ったパンを販売している。同町出身のオーナー小野寺夢津子さんは「パンを通して、雄勝やオリーブのことを多くの人に知ってもらいたい」と思いを込めて生産している。

 看板商品のフランスパン「パン・ド・ロデヴ」の生地に、11月に収穫されたオリーブの新漬けを練り込んだ。これまで使っていたスペイン産に比べて優しくなった塩味と豊かな油分が特長。もちもちしたパンとオリーブ独特の食感が楽しめる。

 市が特産化を目指すオリーブは、津波被害を受けた市内の沿岸4地区で生産が進む。オーナーの小野寺さんは雄勝町でオリーブを栽培する計画の初期段階に携わった。「故郷で実ったオリーブをようやく使うことができた。あれから10年がたったと思うと本当に感慨深い」と話す。

 同町明神地区にあった実家は津波で土台を残して流された。家族は無事だったが、変わり果てた郷里の光景に打ちのめされた。

 「古里をこのままの荒れ地にしたくない」。好きな映画の劇中に、大洪水の後にハトがオリーブの枝をくわえて飛ぶシーンがあったのを思い出した。地域の希望の象徴として、オリーブを植えようと思い立った。

 民間団体による雄勝での栽培は2014年に始まった。まだ安定収量には届かないが、形や大きさが規格外のものを材料に利用。11月下旬に販売を開始した。小野寺さんは「パンを買ってくれる人が雄勝を応援してくれているように感じる。石巻で雄勝のオリーブをもっと広めていきたい」と語った。

 パンは378円。12月いっぱい販売する予定で、材料がなくなり次第終了する。数量限定のため事前予約が望ましい。連絡先はパン工房feeL@カフェ0225(24)6885。

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