社説(12/15):コロナ下の公共交通/バスの役割 見直す契機に

 新型コロナウイルスの影響で、地域の公共交通が利用者の減少に苦しんでいる。生活の足や旅行などの移動手段として重要な役割を担うバスも状況は深刻だ。

 一般路線バスの経営環境は人口減少や都市集中を背景に元々厳しかったが、コロナが追い打ちをかけた。収益を補ってきた観光バスや高速バスの需要も激減した。感染状況は落ち着きつつあるものの、需要の本格回復には時間を要するとの見方が強い。バスをどう守り、活用していくかを今こそ考えたい。

 国土交通省によると、一般路線バスの輸送人員は2020年度、コロナ前の19年度比で一時50%程度減少。21年度も20~30%程度下回る。東北6県も同様の傾向だ。貸し切りバスは10月、修学旅行などに動きがあってマイナス幅は縮小模様だが、全体の先行きの不透明さは続く。

 外出自粛やテレワークの増加が影響したほか、マイカーや自転車に切り替える動きも広がった。バス事業者を悩ませるのが、感染リスクを過度に警戒し、バスを敬遠する利用者の意識が根強いことだ。

 窓を開けて換気し、消毒を徹底すれば感染は起きにくいとして、各地のバス協会などは対策状況の発信を続ける。貸し切り用の大型バスについては約5分で車内の空気が入れ替わる構造をスモーク実験で実演するなど、「密」のイメージ払拭(ふっしょく)に躍起だ。利用者も正しい知識を持って移動手段を選ぶことが求められる。

 国交省によると、路線バスを運行する事業者の約7割、三大都市圏以外に限ると約9割がコロナ前から赤字。不採算路線を維持するため、運賃引き上げや減便などでサービス水準を下げると利用者がさらに離れる負の循環が続く。

 克服に向け、運行データを生かして最適な路線網に再編したり、予約制のデマンド交通など代替手段を組み合わせたりして模索が続いた。そのさなかのコロナ禍だった。

 打開策の一つとして注目されるのが、次世代移動サービスのMaaS(マース)だ。

 鉄道やバスなどの移動手段を組み合わせ、検索や予約、決済を一括して行える仕組み。スマートフォンのアプリを活用することで観光施設などとも連携できる。東北でも仙台MaaSといった取り組みが始まった。将来、機能が充実すれば、公共交通の新たな利用者の掘り起こしにつながる可能性がある。

 バスは地域経済を支えるインフラであり、災害時などには代替輸送を行う地域のライフラインでもある。にもかかわらず、コロナ禍は、経営面も含め存続基盤のもろさを浮き彫りした。

 今の厳しい状況を乗り切るには国や自治体の支援は欠かせない。だが、大切なのは、事業を持続させるためには具体的に何が必要なのかという議論だ。コロナ禍をその契機にしなければならない。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る