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2021ニュース回顧 取材ノートから>伝承拠点、相次ぎ公開

修学旅行で訪れた高校生を案内する藤間さん(中央)=11月25日、石巻市日和が丘の日和山

 2021年も残すところあとわずか。東日本大震災から10年。石巻地方では犠牲者を悼み、震災の記憶と教訓を伝え残す施設のオープンや、復興支援への感謝を伝える催しが相次いだ。新型コロナウイルスとの闘いはワクチン接種という局面を迎えたが、いまだ私たちの暮らしを脅かし続けている。記者の取材ノートから今年のニュースを振り返る。

<教育旅行の定番化期待>

 東日本大震災の発生から10年を迎え、追悼や伝承の拠点となる施設のオープンが続いた。津波で甚大な被害を受けた石巻市の南浜・門脇町地区には3月、「石巻南浜津波復興祈念公園」が開園。敷地内の中核施設「みやぎ東日本大震災津波伝承館」の開館はコロナ禍で見合わせ、6月にずれ込んだ。7月には津波で児童74人と教職員10人が犠牲になった旧石巻市大川小が市の震災遺構として公開が始まった。

 いずれの施設でもオープン前後から展示内容への疑問、批判の声があった。伝承館については、市内の伝承団体や住民から「津波の危険性がリアルに感じられない」「県の施設として県内各地の被災地へ誘導できるのか」といった声が度々寄せられた。

 大川小では、津波訴訟で学校側の事前防災の不備を認めた仙台高裁判決や、震災前の児童らの日常を伝える資料の乏しさを遺族が指摘した。「大川小では児童のほとんどが一輪車に乗ることができた。休み時間の度に、高学年が低学年の子に教えていた」。2年生だった弟=当時(8)=が犠牲になった永沼悠斗さん(27)は、被災した校舎を見つめた。

 永沼さんは当時の学校を知る世代として、展示内容の検討会議に参加した。公開日に集まった報道陣を前に、「最後まで市との議論が深まらず伝えたい事が反映し切れなかった。次世代に伝えるという役目を果たすため、展示の更新に向けて働きかけていきたい」と語る姿に頼もしさを感じた。

 官民で連携を強める動きも見えてきた。石巻南浜津波復興祈念公園の「参加型運営協議会」は2月に発足。12月までに伝承部会を4回開き、公園で活動する市民団体をはじめ、国、県、市の担当者らも参加した。文字通り膝を突き合わせ、よりよい公園運営などについて意見を交わした。

 「震災であれだけの犠牲を払った石巻は被災地の中で、第2次世界大戦の広島のような場所になってもいいはずだ」 伝承部会に参加する石巻市の公益社団法人「3・11みらいサポート」の藤間千尋理事(43)は力を込める。

 みらいサポートは3月、伝承交流施設「MEET門脇」をオープン。緊急事態宣言下でも運営を続けてきた。コロナ禍で7400件ものキャンセルがあったが、修学旅行の行き先が都内や関西方面から被災地に変わるという傾向もあり、11月以降は毎日のように、受け入れが続いた。

 生徒を乗せた大型バスが市内を行き交う光景を見て、震災の記憶が風化する懸念が少しだけ薄れた。遠くない将来、修学旅行先の定番として、石巻が定着していることを期待する。(漢人薫平)

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