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2021ニュース回顧 取材ノートから>石巻で海づくり大会 水産王国・宮城アピール

オンラインで出席された天皇、皇后両陛下が見守る中、誓いの言葉を述べる石巻市寄磯小の児童たち

 「コロナ禍という不安の中で準備を進めてきただけに、開催できたことに万感の思いがあった」

 石巻市で10月3日にあった「第40回全国豊かな海づくり大会-食材王国みやぎ大会」。県水産林政部全国豊かな海づくり大会推進室の菊地弘之参事兼室長(54)は振り返る。

 新型コロナウイルスの影響で当初予定の2020年9月27日から1年延期となった上、各種イベントも縮小、中止を余儀なくされた。それでも趣向を凝らした演出でオンラインで出席された天皇、皇后両陛下をはじめ、全国から訪れた関係者らに「水産王国みやぎ」と東日本大震災からの復興をアピールした。

 大会終了後、菊地参事兼室長が全漁連(東京)を訪れた際、大会担当者から「ここ十数年間で一番良かった大会だった」と高い評価を得たという。「映像や宮城の食材を詰め込んだ特製弁当など震災の支援に対する感謝の気持ちや宮城県の魅力が伝わったのではないか」と分析する。

 「よみがえる 豊かな海を 輝く未来へ」。大会では自然との共存を通じ、持続可能な漁業の実現に向けて努めていくことも満場一致で決議した。震災から10年。最大の被災地である石巻での開催は意義深いものになった。

 一方でサンマの水揚げは不振を極めた。女川町の女川魚市場も記録的な不漁に終わり、市場関係者は「あと数年はこの状態が続くのではないか」と危機感を募らせる。

 例年、女川漁港には100隻以上のサンマ船が入港する。昨年は水揚げ量と水揚げ金額は北海道花咲、大船渡に次いで全国3位になったが、今季はわずか34隻に終わった。

 不漁は海水温の上昇など海況の変化で、日本の近海にサンマが近づかなくなっていることや、たどり着く前に、海外の漁船に漁獲されてしまうとの見方もある。漁場が遠くなっているだけでなく、燃料の高騰による操業効率の悪化が漁業者に追い打ちを掛ける。

 1日に女川漁港に水揚げした「第2源栄丸」(八戸市)の伊藤正幸漁労長=石巻市出身=は「資源が少なく採算が合わないと、サンマ漁をやめてしまう漁師も出てしまう」と心配する。

 女川魚市場の木村仁取締役部長は「他の魚種に転換することは簡単ではない。まとまった量が安定的に取れるようになるのを信じて待つしかない」と話す。

 サンマは生鮮だけでなく、水産加工品などでも需要は高く、町に与える影響は大きい。活路を見いだすまで時間がかかりそうだ。(桜井泉、大谷佳祐)

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