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石巻駅、10月に開業110周年 希望の未来へ復興後押し

「漫画駅」として親しまれている石巻駅。10月に開業110周年を迎える
国鉄分割民営化によりJR東日本となった時の石巻駅。駅前には看板が立つ=1987年4月
JR東日本誕生時の仙石線石巻駅。石巻線の駅とは別に建ち、全国的にも珍しい2つの駅があった=1987年10月

 JR石巻駅が10月28日に開業110周年を迎える。大正、昭和、平成の世を経過し、令和の時代に安全・安定輸送の軌跡を刻む。この間、戦争や国鉄改革といった激動の時代、未曽有の被害をもたらした東日本大震災を乗り越えた。2022年は震災11年。石巻圏域の観光のゲートウエイとして役割は増し、希望の未来へつながる復興を後押しする。

<期待される観光需要>

 石巻駅の後藤謙次駅長は、安全・安定輸送の提供という鉄道の使命を果たすことを大前提に、駅の役割について「人と人をつなぐ場所、人と地域をつなぐ場所」と捉える。

 昨年11月に阪神大震災の被災地である神戸市から女性客2人が石巻駅で降り、構内の漫画モニュメントをバックに記念撮影した。「新型コロナウイルスが落ち着き、東日本大震災から10年がたった石巻の状況を見に来た」という。

 街中には復興のシンボルでもある「いしのまき元気いちば」があり、整備された北上川堤防からの眺めは素晴らしい。対岸には中瀬の石ノ森萬画館がある。半島沿岸部の再生拠点エリアも整備され、観光施設も開業している。

 昨年6月に震災の記憶と教訓を後世に伝える石巻市の石巻南浜津波復興祈念公園内に「みやぎ東日本大震災津波伝承館」が開館した。学生や研修旅行などで来館している。市内には市震災遺構「大川小」もある。

 市はSDGs(持続可能な開発目標)を推進し、最大被災地として防災に力点を置く。教育旅行で学ぶ施設や素材が充実している。

 コロナ禍で地域経済が冷え込んだ2021年。22年はコロナ収束と経済再生への願いは強く、観光需要が期待される。

 東北の中の石巻としてどう魅力を発信し、光り輝いていくか。後藤駅長は「原点は観光素材の磨き上げ、掘り起こしにある。石巻圏のゲートウエイ駅として、観光の一翼を担っていきたい」と語る。

 

<2つの駅舎、90年に統合>

 1912年に石巻駅(石巻線)が開業し、仙北軽便鉄道小牛田-石巻間が開通。この当時、途中駅は涌谷、前谷地、佳景山、鹿又の4駅。56年に曽波神、翌57年に上涌谷駅が開設された。

 この間、39年には女川まで延伸され、陸前稲井、渡波、沢田、女川の4駅を設置。56年に浦宿、89年には地域の要望を受け、万石浦駅が設けられた。

 一方、仙石線(当時は宮城電鉄)は28年、仙台-石巻間が営業を開始。44年に国有化、87年に民営化された。

 現在、石巻駅には両線のほか、小牛田駅と石巻港駅を結ぶ貨物列車が方向転換のため乗り入れている。

 駅舎はしばらくの間、石巻線の駅(汽車駅)と仙石線の駅(電車駅)に分かれていたが、90年に統合された。

 「マンガのまち」を象徴するように、車体に漫画をあしらった「マンガッタンライナー」(仙石線車両)を運行させているほか、街づくりまんぼうの協力で仮面ライダーやロボコンなどのキャラクターを設置したり、駅舎に描くなど「漫画駅」として親しまれている。

【石巻駅 110年のあゆみ】
1912年 石巻―小牛田間に仙北軽便鉄道開業
  15年 石巻―渡波間で牡鹿軌道開業
  19年 仙北軽便鉄道を鉄道院が買収し国有鉄道に
  28年 石巻―陸前小野間延伸開業により石巻-仙台間が開通。二つの駅が隣り合わせに
  39年 石巻線、女川まで延伸
      石巻臨港枝線として、東北振興パルプ(現日本製紙)石巻工場用山下―釜開通
  44年 宮城電鉄、国有化で仙石線に改称
  54年 石巻線、全旅客列車気動車化
  73年 石巻駅に「みどりの窓口」設置
  74年 石巻線からSL機関車姿を消す
  75年 仙石線、全列車禁煙を実施
  82年 石巻線全線CTC化(列車集中制御装置)が完成
  83年 仙台―石巻間ノンストップ電車運転開始
  87年 国鉄分割民営化により、JR東日本が誕生
  89年 石巻線万石浦駅が開業
  90年 石巻線と仙石線を統合した新駅舎開業
2000年 仙石線原ノ町―仙台間地下化、あおば通駅延伸開業
      仙石線鳴瀬川、吉田川に強風対策の新橋が完成
  03年 仙石線車両に漫画を描いたマンガッタンライナー運行開始
      マンガッタンカフェえきオープン
      石巻駅改札に自動改札機導入、Suicaも導入
  08年 石巻駅舎をリニューアル
  11年 東日本大震災で石巻線、仙石線運行見合わせ
      5月に石巻線前谷地―石巻間運転再開
      7月に仙石線矢本―石巻間運転再開
      12月に石巻―仙台間直通快速列車(石巻線東北本線経由)運行開始
  12年 石巻線石巻―渡波間運転再開
  13年 石巻線渡波―浦宿間運転再開
  15年 女川駅を内陸部に移設、3月に浦宿―女川間運転再開
      石巻線石巻―女川間4年ぶりに全線運転再開
      仙石線全線運転再開、仙石東北ライン開業
  22年 石巻駅開業110周年

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