「テイラー文庫」が主人公 石巻の作家、絵本を出版 挿絵は東浜小児童
石巻市の童話作家千葉直美さん(59)が、絵本「本箱は翼になって」を自費出版した。東日本大震災をきっかけに石巻地方の小中学校などに寄贈された「テイラー文庫」を主人公に、文庫の誕生した経緯や児童との触れ合い、地域の魅力などをつづった。
「うわー 大きい 初めてみる海」。市東浜小に文庫が届けられる場面から物語は始まる。文庫は児童がさまざまな本や地域の豊かな自然、文化に親しむ姿を温かく見守る。
各ページを彩る挿絵は東浜小の児童が担当した。千葉さんの原稿を読んだ後に、思い思いの感性で地元の魅力などを描いた。子どもが英語に親しめるようにと文章には英訳も付けた。
文庫は、石巻市で外国語指導助手(ALT)を務め、震災の津波で犠牲になった米国出身のテイラー・アンダーソンさん=当時(24)=の両親が寄贈した。日米の架け橋になろうとしたテイラーさんの遺志を受け継ごうと2016年に活動を始め、これまでに石巻地方の24校に送った。
東浜小では、地域で盛んなカキ養殖をはじめ、海や山をテーマにした英字の本などを置く。千葉さんは読み聞かせで訪問してきた。「図書館活動が活発な学校で、自然の美しさも印象的だった。文庫が子どもたちにどう受け入れられているのか、想像したことが物語の着想になった」という。
絵本のタイトルは、過去や未来、世界中どこにでも連れて行ってくれる本の世界や読書の可能性をイメージした。千葉さんは「いろんな人の思いがこもった文庫とそこにある本、そしてテイラーさんの物語を通して、子どもたちに夢を持つことの大切さを伝えたい」と話す。
絵本は市内の書店などで販売中。A4判17ページ、価格は1200円(税別)。