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「未来の命を守りたい」 石巻でフォーラム 震災遺族6人語り合う

震災から10年の歩みを語った(左から)鈴木さん、田村さんと妻弘美さん、丹野さん

 東日本大震災の津波犠牲者の遺族らでつくる「3・11ネットワーク」は20日、「東日本大震災から学ぶべきもの」と題したフォーラムを開催した。県内で伝承活動などを続ける遺族6人が、震災後の歩みや失った命との向き合い方を語り合った。

 石巻市門脇町5丁目の震災伝承交流施設「MEET門脇」から配信し、会場とオンラインで計約110人が参加した。

 「大川伝承の会」共同代表の鈴木典行さん(57)は、大川小6年だった次女真衣さん=当時(12)=を亡くした。児童と教職員合わせて84人が犠牲となった現場で、自らの手で真衣さんを土の中から抱き上げた当時を振り返った。「話していいのか、最初はためらった」と話し、「真衣がそばにいると思えるからこれからも話し続ける。あの日の事を伝えることで未来の命を守りたい」と語った。

 「一般社団法人健太いのちの教室」の田村孝行代表理事(61)は、七十七銀行女川支店の行員だった長男健太さん=当時(25)=を失った。健太さんを含む行員ら13人は、支店長の指示で、高台の指定避難場所ではなく屋上に避難した。支店は津波で横倒しになり、12人が犠牲になった。「現地で高台を見ると語らずにはいられなかった。話を聞いてくれた人たちや、全国の事故遺族とのつながりが原動力になった」と説明した。

 今後の活動の方針についても意見を交わし、どの遺族も継続していく意欲を示した。

 長男公太さん=当時(13)=を亡くし、名取市の津波復興祈念資料館「閖上の記憶」で代表を務める丹野祐子さん(53)は「いつかは若い人に託したいが、伝承活動で生計を立てるのは難しい。子どもの世代に苦しい思いをさせたくないという気持ちもある」と複雑な胸中を述べた。

 3・11ネットは2016年に設立。フォーラムは今年で4回目。

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