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未来の命守る 石巻市震災遺構「門脇小」、一般公開前に内覧会

震災遺構として整備された旧門脇小の本校舎。右奥が展示館
複合災害で被災した教室などを見ることができる観察通路
石巻地方の地層の標本を掲示する展示室「石巻平野と巨大津波」

 石巻市は4月3日に一般公開を始める市東日本大震災遺構門脇小の報道機関向け内覧会を2月27日、現地で開いた。被災した本校舎や校舎を増改築した展示館などを公開した。震災の津波と火災で被災した痕を唯一残すとされる旧校舎を中心に震災の記憶と教訓を伝えていく。

 旧校舎に併設された観察塔から校舎内の被災状況が見学できる。1階は津波と火災による両方の被害が見て取れ、2、3階は火の爪痕が色濃い。当時のままに並ぶ机や椅子の天板や座面は焼け焦げ、窓枠やガラスは溶けている。

 旧校舎北側の展示館は、写真や映像をはじめ、多くの証言を基にした展示物で構成する。「記憶を紡ぐ」という空間では、一人一人で異なる被災体験を絵と言葉で表現。災害を自分事として捉える大切さを来訪者に訴える。

 被災物や映像も津波や火災の脅威を生々しく突きつける。ミニシアターでは児童や教職員、住民らのインタビューを集めた約20分の映像を上映。石巻平野の地層標本も掲示し、石巻地方が過去に何度も大津波に遭っていたことを示す。

 市震災伝承推進室の水沢秀晃室長は「津波火災の痕を見て、垂直避難が正解ではない場合もあることなどを思い描いてほしい。一人でも多くの未来の命を守る場所にしたい」と話した。

 市は同日、住民向けの内覧会も開いた。近隣のかどのわき町内会を中心に約30人が参加。展示設計を担当した学芸員の解説を聞きながら、遺構内を見学した。

 同町内会副会長の比佐野信一さん(76)は「実際の映像もあり、津波の恐ろしさを訴える力がある」と話した。地域に住民の生活を取り戻すため、一度は遺構の整備に反対したが「長い目で見て地域のためになると思う。震災の風化を防ぐため、修学旅行の聖地になってほしい」と期待した。

 当時同校3年だった大学生中山莉緒さん(20)も足を運んだ。在籍していた3年2組の教室は、理科の授業中だった姿のまま外から見学できる。中山さんは「学校が残ったおかげで楽しい記憶も思い出せる。震災を知らない人にも見てもらい、次の災害への備えに役立ててほしい」と語った。

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