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復興の現況、課題、まちづくり…石巻地方3市町長に聞く

斎藤石巻市長
渥美東松島市長
須田女川町長

 東日本大震災から11年がたつ。石巻市の斎藤正美市長、東松島市の渥美巌市長、女川町の須田善明町長に復興の現況や課題、今後のまちづくりなどについて聞いた。

斎藤正美石巻市長

<事業の9割完成、最終段階>

-石巻市の復興状況をどう捉えるか。

 「住まいの再建を最優先に進め、これは成し遂げた。医療、福祉、教育の再生、産業、観光の復興も着実に進めてきたが、新型コロナウイルス感染拡大が挫折させた。アフターコロナの地域経済の立て直しが課せられた責務だ」

 「今月には避難道路の石巻かわみなと大橋が開通する。復興事業のおおむね9割が完成し、復興完結の最終段階に入った。あと一歩だと思っている」

-災害公営住宅の家賃など今後増えていく被災者の負担がある。

 「低所得者の家賃は11年目から徐々に引き上げ、21年目に本来の家賃にするが、なお困窮する場合には一般市営住宅の減免制度と比較して入居者にとって有益な方を採用していく。防災集団移転促進事業の借地料は市街地の減免措置が終わる10年が経過した後、どのような支援策があるか検討している」

-コミュニティーづくりはどう進めるか。

 「新市街地では新たな自治会を設立したが、住民同士のコミュニティーが希薄だ。復興公営住宅を整備した既成市街地では、既存住民との融和が難しい。時間を要しているのが現状だ」

 「他の地域でも自治会活動の担い手不足が深刻で、役員の負担軽減の仕組みづくりが必要だ。市職員の積極的な参加もお願いした。補助金交付などで地域活動の再生を進めている」

-4月には震災遺構門脇小の一般公開を始める。

 「津波火災の恐ろしさを体感してもらえる施設になった。防災学習プログラムや避難所設営研修なども検討している。周辺施設や語り部活動をしている団体と連携を図りながら、訪れた人に震災の事実と教訓を伝え続けていきたい」

(聞き手は保科暁史)

 

渥美巌東松島市長

<足元の魅力発掘、観光再興>

-震災から11年になる。

 「新型コロナウイルスの対応に追われた1年間だった。宮戸地区の遊覧船乗り場の桟橋は今春の完成を目指しており、震災復旧のハード事業はほぼ完結する。今後は『心の復興』を含めたソフト事業が主体だ」

-具体策は。

 「災害公営住宅に入居する全被災世帯に対し、2022年度から家賃を市独自に一律3割減免する。被災地では収入超過世帯が高騰した家賃を払えず転出する例が増えている。減免額は年約5500万円で、黒字運営は可能だ。働き盛りの世帯の定住を後押しする」

 「人口減少時代を見据え、若年層の定住を促すために良質で安価な住宅地の供給が不可欠だ。市街化区域の拡大を前進させたい」

-震災の風化が課題だ。

 「当面は市主催の追悼式を継続する。1133人が犠牲になった自治体として語り継ぐことが責務だ。復興は途上という政府への訴えでもある。語り部活動や、震災を題材にした舞台などの文化活動も支援する」

-点在する移転元地約42ヘクタールの活用は。

 「野蒜地区に観光農園をつくる『令和の果樹の花里づくり構想』は造成中の10ヘクタールに加え、所有権が混在する計約15ヘクタールも復興庁事業を活用して集約する方針だ。その他地域に点在する約17ヘクタールは、国の脱炭素化の動きを踏まえ、太陽光発電装置の設置を検討中だ」

-コロナ後を見据えた観光振興は。

 「野蒜海水浴場を今夏、12年ぶりに開く。ビーチテニス・バレーのコートを整備し、ビーチスポーツの拠点を目指す。砂像作家の保坂俊彦さんが市地域おこし協力隊員を務める縁を生かし、砂像の全国大会を誘致し定着させたい。足元の魅力に光を当てる『あるもの探し』で交流人口を増やす」

(聞き手は相沢美紀子)

 

須田善明女川町長

<世代超え、ネットワーク網>

-震災から11年がたつ。

 「町の復興事業は完了し、県事業で半島方面の道路関係が残っている。進捗(しんちょく)率はほぼ100%」

 「復興事業とは別に(国直轄整備への移行の前提条件となる『新規事業採択時評価』の手続きに入った)国道398号石巻バイパスの女川方面への延伸は、住民や国、県、関係自治体に協力いただけたからこそ。町が抱えていた課題が復興の過程で解消に向けて進んだものもある」

-新型コロナウイルスの影響を受ける中、復興まちづくりが進む。

 「震災後のまちづくりの第2ラウンドが、出はなをくじかれた。リスタートを図らないといけない」

 「今年は行政としてやろうとしていたこと、地域の皆さんがやりたかったことを形にしていきたい。新しい世代を地域にコミットさせ、世代を超えたネットワークもつくりたい」

-「女川町民会議」が3月スタートする。

 「この町で活動したいがどうしたらいいか分からない人もいると思う。プレーヤーは町民や女川をステージとする皆さん。やりたいことを実現させていく時に、最初に乗っかるプラットフォームのイメージだ」

-人口減対策は。

 「人口減少下で発生する課題への対応が重要。公民連携や指定管理者制度で民間に公共サービスに参画してもらう。コスト削減や地域経済活性化に寄与し、人の流れが生まれる。町の魅力となり、人が入ってくるようになる」

-東北電力は女川原発の再稼働を22年度以降に見据える。

 「期限ありきではなく、一つ一つの対策をおろそかにしない姿勢で進めてほしい。安全対策や現場の意識共有、安全文化浸透への意識を求め続けていく」

(聞き手は及川智子)

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