囲碁「七大タイトル」って何?仙台出身・一力遼棋聖の躍進で注目度急上昇
仙台市出身の囲碁のプロ棋士、一力遼三冠(26)=棋聖、本因坊、天元=の躍進に伴い、宮城県内でもタイトル戦がニュースで取り上げられる機会が増えました。「宮城県出身者が七大タイトルを獲得するのは初めて」「東北出身の棋士が2日制の三大棋戦7番勝負を制したのは史上初めて」―。一力三冠にまつわる記事によく出てくるタイトル戦。「基本のキ」をまとめました。(編集局コンテンツセンター・小沢一成)
棋聖が最高位
囲碁の七大タイトルは優勝賞金順に「棋聖」「名人」「王座」「天元」「本因坊」「碁聖」「十段」で、棋聖が最高位とされています。最も長い歴史を持つ本因坊戦は今年の第79期から優勝賞金が減額され、序列も3位から5位となりました。
プロ棋士がタイトルを争う大会「棋戦(きせん)」はさまざまありますが、七大タイトルを懸けた「七大棋戦」は何が異なるのでしょうか。
「挑戦手合制度」を採用
最大の違いは、挑戦者がタイトル保持者と勝負する「挑戦手合制度」を採用していることです。タイトル保持者にとっては「防衛戦」になります。
棋聖戦と名人戦は「2日制7番勝負」です。1回の対局を2日間かけて行い、全7戦のうち先に4勝するとタイトルを獲得する仕組みです。
2日制の対局では初日を終えると、翌日に先に打つ棋士が次の手を紙に書いて封印し、立会人に渡します。これが「封じ手」といわれるもので、対局再開時に開封されます。次に打つ番の棋士が最新局面を一晩考えられる不公平をなくすのが目的ですが、封じ手を予想するのもファンの楽しみとなっています。
王座戦と天元戦、本因坊戦、碁聖戦、十段戦の5棋戦は「1日制5番勝負」です。1回の対局を1日で終え、全5戦のうち先に3勝した方がタイトルを得ます。本因坊戦は「2日制7番勝負」でしたが、今年の第79期から実施方式が変更となります。
全棋士が参加可
七大棋戦は全ての棋士が参加できるのも大きな特徴です。挑戦者の決め方はそれぞれ違いますが、名人戦や本因坊戦は予選を経て、挑戦者を決めるリーグ戦(総当たり戦)を行います。リーグ入りはトップ棋士の証しといわれています。
一力三冠がこれまでに獲得した七大タイトルは、第45期碁聖(2020年)と第46期天元(2020年)、第46期棋聖(2022年)、第47期棋聖(2023年)、第78期本因坊(2023年)、第49期天元(2023年)です。なお、3度の優勝を誇るテレビ棋戦「NHK杯」は挑戦手合制度でなく、優勝しても次期大会は再びトーナメントを戦うため、七大棋戦には入っていません。
一力三冠以外の東北出身棋士で七大タイトルを獲得したのは、第10期王座(1962年)の故宮下秀洋九段(福島県出身)、第25期王座(1977年)と第23期天元(1997年)の工藤紀夫九段(青森県弘前市出身)の2人です。
タイトル獲得で昇段も
タイトルを1期獲得するだけでも大変なことですが、連続5期、もしくは通算10期獲得すると、「名誉棋聖」「名誉名人」などと、名誉称号を名乗ることができます。要件を満たすと、現役で60歳に達した時か、引退時に名誉称号を名乗ることができます。
七大棋戦の概要
【棋聖戦】
▷主催 読売新聞社、日本棋院、関西棋院
▷優勝賞金 4300万円
▷挑戦手合 2日制7番勝負、持ち時間各8時間
▷棋戦形式 予選トーナメントとC、B、A、Sの各リーグがある。A~Cリーグ各1位と最上位Sリーグ2位の5人がパラマス式の変則トーナメントを戦い、勝ち抜いた棋士がSリーグ1位に1勝のアドバンテージがある変則3番勝負の挑戦者決定戦に臨む。
▷創設年 1976年
【名人戦】
▷主催 朝日新聞社、日本棋院、関西棋院
▷優勝賞金 3000万円
▷挑戦手合 2日制7番勝負、持ち時間各8時間
▷棋戦形式 予選C・B・A、最終予選を経て、9人のリーグ戦で挑戦者を決める。
▷創設年 1974年
【王座戦】
▷主催 日本経済新聞社、日本棋院、関西棋院
▷優勝賞金 1400万円
▷挑戦手合 1日制5番勝負、持ち時間各3時間
▷棋戦形式 予選C・B・A、最終予選を経て、16人によるトーナメント形式の本戦で挑戦者を決める。前期決勝進出者とタイトル保持者は次期本戦シードとなる。
▷創設年 1952年
【天元戦】
▷主催 新聞三社連合(北海道新聞社、東京新聞、中日新聞社、神戸新聞社、徳島新聞社、西日本新聞社)、日本棋院、関西棋院
▷優勝賞金 1200万円
▷挑戦手合 1日制5番勝負、持ち時間各3時間
▷棋戦形式 予選C・B・Aを経て、28人以上のトーナメント形式の本戦で挑戦者を決める。前期準決勝進出者とタイトル保持者は次期本戦シードとなる。
▷創設年 1974年
【本因坊戦】
▷主催 毎日新聞社、日本棋院、関西棋院
▷優勝賞金 850万円
▷挑戦手合 1日制5番勝負、持ち時間各3時間
▷棋戦形式 予選C・B・A、最終予選を経て、16人のトーナメント戦で挑戦者を決める。前期決勝進出者は次期本戦でシードとなる。
▷創設年 1939年
【碁聖戦】
▷主催 新聞囲碁連盟(河北新報社、新潟日報社、信濃毎日新聞、静岡新聞社、北國新聞社、京都新聞社、山陽新聞社、中国新聞社、四国新聞社、高知新聞社、熊本日日新聞社、南日本新聞社、沖縄タイムス社)、日本棋院、関西棋院
▷優勝賞金 800万円
▷挑戦手合 1日制5番勝負、持ち時間各4時間
▷棋戦形式 予選C・B・Aを経て、24人以上のトーナメント形式の本戦で挑戦者を決める。前期準決勝進出者とタイトル保持者は次期本戦シードとなる。
▷創設年 1975年
【十段戦】
▷主催 産経新聞社、日本棋院、関西棋院
▷優勝賞金 700万円
▷挑戦手合 1日制5番勝負、持ち時間各3時間
▷棋戦形式 予選C・B・A、最終予選を経て、20人のトーナメントによる本戦で挑戦者を決める。前期準決勝進出者が次期本戦シードとなる。
▷創設年 1961年
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