デスク日誌(4/9):人情の機微

 西洋文明を積極的に取り入れた明治初期の1872年、日本のフランス料理店の草分けとして東京・築地に精養軒ホテルが開業した。上野公園の整備に伴い、76年には支店として不忍池の池畔に上野精養軒も誕生している。

 文明開化の一翼を担う社交場となり、多くの王侯貴族や名士、文豪らに利用された。日本近代経済の礎を築いた渋沢栄一も足しげく通い、五所川原市出身の太宰治も訪れていた。

 創業から150年の伝統ある精養軒の味を、手頃な値段で楽しめる店が台東区民会館の8階に入っている。社員食堂のような雰囲気が漂う浅草店は、ランチが1000円から。壁には歴史を感じさせる精養軒のモノクロ写真が並び、迫力満点の東京スカイツリーが東側の窓に映える。

 満ち足りた気分で会計カウンターに足を運ぶと、レジの脇に置かれた卓上POPが目に入った。店では全て福島県産米を使っていると書いてある。聞けば会津産のコシヒカリで、「ささやかな復興支援の気持ち」で採用しているという。

 短いやりとりながら、人情の機微に触れる思いも味わえた。
(東京支社編集部長 末永秀明)

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