紙芝居で「防災」訴え 日和幼稚園遺族有志の会が制作 慰霊碑前で発表
東日本大震災で犠牲になった石巻市の私立日和幼稚園の園児5人の遺族らでつくる「子どもの安全を考える日和幼稚園遺族有志の会」が、宮城学院女子大教育学部の学生の協力を得て紙芝居を制作した。発表会が3月29日、石巻市門脇町の慰霊碑前であった。
紙芝居のタイトルは「忘れないよ 小さな命とあの日のこと」。事故の教訓や未来の子どもたちへのメッセージを伝えるため、被災の実態について子どもたちも理解できるようにと紙芝居にした。出来上がった紙芝居を受け取った日和幼稚園遺族有志の会の佐藤美香さん(47)が慰霊碑に向かい、披露した。
紙芝居は朝、元気に幼稚園に行き、友達と園庭で元気に遊ぶなどしていた様子から始まる。その後、平和な日常は一変。震災で発生した津波と火災で5人の園児が送迎バス内で命を落とす。その中で園児が最後まで互いに励まし合ったことなど、遺族にとって、ほんのわずかだが心の救いとなったことなどが描かれる。
さらに一晩で街がなくなったこと。それでも多くの人が前を向き、元の姿を取り戻そうと歩んでいることを天国の子どもたちに報告する内容となっている。
紙芝居制作は、宮城学院女子大教育学部で幼児教育を専攻し、幼稚園教諭や保育士を目指している3年生が昨年7月、石巻市を訪れ、園児だった長女愛梨ちゃん=当時(6)=を失った佐藤さんから、事故の実態を聴いたことがきっかけ。
佐藤さんは「次の世代の子どもたちに語り継いでいく伝承紙芝居として活用したい」と話した。
制作に協力した宮城学院女子大3年の橋本有梨杏さん(21)は「子どもたちにも震災の教訓がうまく伝わるように、図柄などに工夫した。多くの子どもたちに見てほしい」と希望する。
石巻市のNPO法人などが協力し、日本たばこ産業(JT)の3・11メモリアルネットワーク基金の助成を受けた。