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「いんぐりっしゅ喫茶室」石巻かほく連載300回 筆者に聞く

大津さん
連載「いんぐりっしゅ喫茶室」の初回

 石巻かほくの毎週木曜日の連載「いんぐりっしゅ喫茶室」が5日で300回を迎えた。コラムを担当する大津幸一さん(74)に連載への思いを聞いた。(聞き手は沼田雅佳)

   ◇

-2015年7月に始まった連載が300回に達しました。

 「気が付けば300回という感じで自分でも信じられません。光栄の極みです。こういう機会を頂けたことに感謝しかありません」

-連載執筆のきっかけを教えてください。

 「久野義文記者(現OB)からの提案でした。喫茶室のようにくつろげる雰囲気で読めるようなコラムをとお願いされました。当時は石巻専修大で英語を教えていました。学生にとって分かりやすい講義を心掛けていたので、趣旨にすぐ賛同しました」

-週1回のペースでコラムを続ける上で苦労した点はありますか。

 「読んでいただく対象は若年層から高齢者までと幅広い層の方々です。難しい学問的なことではなく、かといってあまりに簡単に書き連ねるのもどうか。このあんばいが難しく、当初はだいぶ悩みました」

-1回目のコラムのタイトルは「すみません」でした。

 「『I’m sorry』は私たち日本人がよく使う英語ですが、状況によって意味も変化します。世代を超えておなじみの表現ですし、学問的な講釈とはおよそ関係ありません。2回目は『これはペンです(This is a pen)』。なぜか、誰しもが抱く素朴な疑問ではないかと思って選びました。苦労するのはテーマ選びとタイトルです。常に手帳を持ち歩き、思いつくと書き留めています」

-いつ、どこで執筆するのですか。

 「テーマが決まれば作業に入ります。紙に骨子を書き、主に朝方に自宅のパソコンで書きます。早いときは2時間で終えますが、締め切り間際までかかるときもありますね」

-取り上げるテーマに変化はありましたか。

 「だいぶ回が進んだ頃に石巻の親友からコメントをもらいました。君のコラムを読むのが楽しみだが、昔話がよく出てくる。今起こっていることを載せることも大事ではないかと。その言葉にハッとしました。それ以来、世界のカレント・トピックス(時事問題)をテーマに採用するようにしました。私的な経験談というより、より一層俯瞰(ふかん)した視点で書くようにも気を付けています」

-コラムにはどのような思いを込めていますか。

 「特に若い世代に言葉への探究心を持ってほしいということです。英語を学ぶことは日本語という共通の『立ち位置』で学生や生徒と学び、また、教えること。日本語を振り返り、言葉を大事にすることだと思います。これは私が英語を学ぶ原点で、英語教師として常に心掛けてきたことです」

 「近年、戦後英語教育への反省から、とにかく使える英語を学ぶことが重視されています。文法や読み書き中心の授業は時代にそぐわないといった風潮が見られ、幼児からの英会話や全て英語で行うオール・イングリッシュの授業が推奨されています。私は振り子が逆に振れ過ぎたと思い、疑問を感じています。英語という外国語の日本語にない仕組みや発想の違いをきちんと学んだ上での英会話ではないかと思います」

-300回続ける上で「力」になったものはありますか。

 「街で出会った知人や読者の方から『読んでいますよ』と声を掛けられることです。『読んでいます』という言葉。これが何よりの原動力になります」

 「欲張りかもしれませんが、読者の皆さんからコラムへの率直な感想や疑問を頂ければと思います。このようなテーマをぜひといった要望もお寄せいただけると幸いです」

-今後の抱負を教えてください。

 「およそ800字という限られた字数で起承転結をまとめる作業は大変ですが、得難い文章修業の場を提供していただいたと思っています。今後も石巻という地域を大事にしながら世界の情勢にアンテナを張り、書き続けていきたいと思います」

大津幸一(おおつ・こういち)さん:1947年10月、石巻市生まれ。石巻高卒、東京外語大英米語学科卒。東京・桐朋女子中高や石巻女子高(現石巻好文館高)などの教員を経て石巻専修大教授を務めた。2020年9月から石巻市国際交流協会会長。石巻市泉町の自宅で1人暮らし。連載へのご意見などは大津さんohtsukobo@gmail.com

石巻かほく・コラム「いんぐりっしゅ喫茶室」
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