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毛利総七郎の生涯を一冊に 千葉さんの遺稿、結実 収集活動や研究資料を解読

毛利コレクション整備検討委員会が開催された時の千葉賢一さん(左)と阿部和夫さん=2002年1月、撮影・毛利伸さん

 郷土史家でもあった故千葉賢一さん(1942~2016年)が石巻市職員時代、毛利コレクションで知られる毛利総七郎(同市住吉町生まれ、1888~1975年)の生涯をまとめた原稿が、逝去から6年後「千葉賢一氏遺稿 毛利総七郎の世界」として発刊された。本は生前の千葉さんを知る人たちの手で製作。千葉さんの労力が七回忌に当たる今年、遺稿集となって実を結んだ。

 千葉さんは市教委文化係、市図書館、市史編さん室、石巻文化センター、毛利コレクション整備推進室と文化畑を歩いた。ライフワークとしたのが、七十数年かけて10万点を超える資料を収集した総七郎の生涯に光を当てることだった。毛利家から預かった総七郎の日記や手帳、書簡の解読に情熱を注いだ。「くせ字もあり、判読が難しい」と言いながら楽しそうに取り組んでいた。

 原稿を書き上げた頃に東日本大震災が発生し、鹿妻地区の家にあった原稿が津波で流失。千葉さんは落胆したが、患っていた病気と闘いながらUSBメモリーに記録されていた内容を基に再び書き直した。しかし病魔にはかなわず、本として世に出すことなく2016年3月、永眠した。

 遺族から遺稿を託されたのが千葉さんの市職員時代、市教育長だった阿部和夫さん(84)。昨年11月、市博物館が開館し毛利コレクション展示室が設置されたことで「今しかない」と出版を決意、今年3月の七回忌に合わせて作製した。

 発刊には、「総七郎は私の曽祖父なのでお手伝いしたい」と申し出た毛利屋代表取締役の毛利壮幸さん(55)も協力。編集は郷土史出版で交流があったヤマト屋書店代表取締役会長の阿部博昭さん(72)が担った。

 毛利さんは「千葉さんの原稿を本にすることは、毛利コレの活用を図ってきた父・伸(1935~2019年)の願いでもあった。遺稿集は曽祖父や毛利コレのことを広く知ってもらう道標になる」と喜ぶ。

 阿部和夫さんは「収集に私財を投じた総七郎の人物像が浮き彫りにされたのは初めて。生涯をかけて書いた千葉さんの思いを一つの形にでき、責任を果たせた」と感慨深げだった。

「千葉賢一氏遺稿 毛利総七郎の世界」(監修・毛利伸、編集・阿部博昭)

 明治期・大正期・昭和期に分けて総七郎の収集活動を詳しく紹介。生涯の年譜も掲載した。研究資料も興味深く、民俗学者・柳田国男らとの交友や発掘の様子、旅のスケジュールなどを記した日記や手帳などを解読している。時代背景も書き込まれていて、当時の様子を知ることができる。

 阿部和夫さんの補足で(1)毛利コレクションの内容・点数と調査進捗状況(2)これまで出された調査刊行物(3)毛利コレクション展図録表紙一覧-が加えられている。A4判、195ページで一部カラー。松弘堂(石巻市あゆみ野3丁目)から500部発行(非売品)。石巻市博物館をはじめ全国の博物館などに配布した。

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