あの日の教訓を語る、感じる 石巻地方でイベントや視察
震災学ぶ「げんば探訪・講話 」 キボッチャ三井さん、防災軸ににぎわい創出
県と東北大災害科学国際研究所の「3.11げんば探訪・講話」が4日、石巻市南浜町2丁目のみやぎ東日本大震災津波伝承館であった。貴凛庁の三井紀代子代表取締役が「希望・防災・未来 防災体験型宿泊施設KIBOTCHA」の演題で、震災以降の新たな学びや気づきなどについて意見を述べた。
元自衛官という三井さんは、東松島市旧野蒜小校舎を利活用したKIBOTCHAの経営理念や意義について説明。「将来の担い手である子どもたちに震災の教訓や命の大切さを伝え、防災教育につなげていきたい」と決意を述べた。
施設名は希望、防災に未来のフューチャーを加えた造語であることも補足し、「震災遺構ではなく、未来へ向かうことをテーマにしている」と強調。国の手の届かないところにまで気を配り、防災を軸にした観光振興や地域の豊かな食、自然などを生かしたまちづくりにも意欲を示した。
経験豊富な自衛官OBならではの多彩な学びのプログラムを用意していることにも触れながら「震災継承を学びの中から発信できれば…」とも付け加えた。
被災者らの「心の復興」についても関心を示し、「誰も取り残さない世の中になることが大切。さまざまな活動を継続することが居場所づくりとなり、希望ある未来づくりにつながると思う」と、今後のさらなる奮闘を誓った。
講話は、震災の記憶と教訓を伝え継ぐために、伝承館を県内の伝承拠点として機能強化を図るための特別企画の一環。2回目は11月6日に、南三陸ホテル観洋女将(おかみ)の阿部憲子さんが「被災地における宿泊施設の取り組み」の演題で講話する。時間は午後1時半~午後2時半。無料。
県内語り部プロジェクト 大川伝承の会・永沼さん「悔い残さぬ平時の備えを」
東日本大震災の教訓を次世代につなげようと、「大川伝承の会」の永沼悠斗さん(28)は10日、石巻市南浜町2丁目のみやぎ東日本大震災津波伝承館で講話した。
震災当時高校生だった永沼さんは津波で弟、祖母、曽祖母を亡くした。2014年に語り部活動を開始し、現在は会社員をしながら震災伝承に向けた活動を続ける。
永沼さんは震災2日前に起きた地震にまつわる後悔から、平時からの備えの重要性を指摘。「災害について考えるきっかけがあったのに何もしなかった。命が助かる可能性が1%でも上がるよう取り組んでほしい」と話した。
就職先が社会貢献活動を認めないなど、若い世代が活動を続ける難しさについても言及。「自分の繊細な部分を初対面の人に話すのはとてもエネルギーがいる」と、企業や聞き手も含めた語り部を育む環境の必要性を述べた。
講話は公益社団法人3・11みらいサポートが主催する定期講話「県内語り部プロジェクト」の一環。プロジェクトは毎月第2・3土曜日に同所で午後1時から。次回17日は一般社団法人「閖上の記憶」の小斎正義さんが講話する。
災禍と今を体感 大学生、東松島・あおい地区など訪問
東北福祉大、神戸学院大、工学院大の大学生らが4日、東松島市あおい地区と石巻市南浜町2丁目のみやぎ東日本大震災津波伝承館などを訪れ、ボランティア活動と視察研修にそれぞれ取り組んだ。
東北福祉大を中心に被災地で継続的に実施している広域大学間連携の「東日本大震災10年-未来への思いを紡ぐ大学生プロジェクト」の一環。2年ぶりとなった今回は「TKK3大学協働」と題して、学生10人、引率の職員ら4人が参加した。
あおい地区では1丁目公園で、大学側の14人は、小野竹一同地区会会長ら地元関係者4人とともに草取り作業に汗を流した。目立っていた草がきれいになくなり、全員が満足そうな表情を浮かべた。
小野会長らの案内で津波伝承館に加え、周辺の石巻南浜津波復興祈念公園の周囲も熱心に見学。小野会長から津波と火災に見舞われた旧門脇小や、津波で多くの犠牲者を出した大川小の被害状況、震災から見事に地域コミュニティーを確立し、協働のまちづくりを実践し続けるあおい地区の現状説明などを受け、大学生は熱心に耳を傾けていた。
小野会長は「震災での被災状況など把握し、今後のボランティア活動や防災への意識向上につなげようとする大学生の皆さんの前向きな姿勢は素晴らしい」と感想を語っていた。