女川水産業、ナマコに託す 町と東北大が増養殖技術確立 「高級品」事業担い手探る

 宮城県女川町が主に中国で高値取引されるマナマコの増養殖事業を進めている。東北大との共同研究で、稚ナマコを陸上で人工的に増やして海中飼育する生産技術を確立した。地球温暖化などで海況が変わる中、町はナマコが地元水産業の「救世主」になるとみて事業を本格化させる。(石巻総局・松村真一郎)

水揚げしたナマコを確認する関係者=今年2月、女川町

 「これからの漁業は取るだけでは立ちゆかなくなる。増養殖も考えなければならない」。ナマコの増養殖研究を担った木島明博東北大名誉教授は8月27日、町内で開いた研究報告会で、集まった水産関係者ら約50人に強調した。

 町は2018年、ナマコの生産技術確立へ共同研究を始めた。町内にある研究施設の水槽で稚ナマコを人工的に増やし、マイクロナノバブル(極微小水泡)で稚ナマコの外敵となる動物プランクトン「コペポーダ」を除去した。

 20年12月、水槽で育てた計1万6300個をすみかとなるカキ殻と共に漁網に入れ、町内19カ所の海中に放流。1年2カ月後の今年2月に網を引き揚げた。

 研究で生産した個体と海中で網の外から混入した個体を区別するため、回収できた計1202個のうち810個の遺伝子を解析。約7割に当たる560個が生産した個体と判明した。

 木島氏は「カキ殻入り漁網による海中飼育の効果は有効と考えられる。事業化の可能性はある」と話す。

稚ナマコを付けて放流していたカキ殻を引き揚げる共同研究の関係者ら

 東北では、岩手県栽培漁業協会(大船渡市)が08年度から稚ナマコを増養殖し、県内外の漁協などに出荷している。15年度に23万9000個だった出荷数は21年度に79万3500個と3倍以上に増えている。

 協会の山口浩史専務理事は「国内外の需要が高まり、漁業者の所得を上げるために漁協などからの出荷要望が年々多くなっている」と言う。

 女川町では海洋環境の変化に伴い、代表魚種のサンマの水揚げが近年激減するなど基幹産業の漁業に深刻な影響を与える。ナマコは高級食材として主に海外で人気が高い。町は共同研究で増養殖技術を実証できたことから、次のステップとして事業の担い手を探る。海外輸出も見据えて育てた個体の販路開拓に取り組む方針。

 須田善明町長は「(ナマコ増養殖は)地域の水産業の軸を考える上で必ずプラスになる。町としてどんな支援ができるか検討したい」と期待を寄せる。

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