水揚げ不振で膨らむ経費 引退した漁師仲間も <参院選・暮らしどこへ>

深刻な水揚げ不振が続くサンマ=2021年9月、女川魚市場

 地球温暖化、海流変化と原因は明らかなのに、自然相手ではどうにもならない。もどかしさと焦り、手を差し伸べてくれない政治への諦念が入り交じる。

 小型漁船の底引き網漁に当たる宮城県石巻市の漁師安海繁男さん(63)は、収入の主力となるコウナゴ漁の不振に悩む。

 宮城県内のコウナゴ水揚げ量はかつて年間約1万トンで推移したが、東日本大震災後に減り続け、2020年から2年連続ゼロ。5月中旬まで1カ月半にわたる今季は約35トンに終わった。

 石巻魚市場では震災前、売上高が10億円を超え、安海さんも最盛期に1季で2000万円を売り上げた。今季は価格がつり上がり、何とか500万円程度を確保できたが、経費を引くとさほど残らない。

 「値の良いコウナゴは漁師の年収を左右するが、今季は採算が取れない船がほとんどだ」と嘆く。

 花形魚種の不漁に追い打ちをかけるように漁網や籠、燃油といった石油製品の値上がりが続く。軽油は1リットル当たり約30円上昇し、月100万円近く負担が増す。網を引くワイヤの価格は鉄鋼需要の高まりで2割上がり、操業を圧迫する。

 新型コロナウイルス下の需要減で魚価は軒並み3割ほど下落した。苦境に耐えきれず、漁師を引退した仲間もいる。安海さんは「経費だけがかさみ、このままでは漁師がいなくなる。国に助けてほしい」と訴える。

 海洋異変で水揚げが激減する大衆魚。代表格のサンマも歴史的不漁にあえぐ。

 北海道東沖の漁場に向け8月に宮城県女川町の女川港を出るサンマ船団。準備する船員らの表情は晴れない。約20年サンマ漁を続ける石巻市の阿部一馬さん(50)は「経営が成り立つ船は全国の3分の1程度だろう。サンマ漁自体の存続が危うい」と肩を落とす。

 全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)によると、21年の全国サンマ水揚げ量は前年比38%減の1万8291トンと3年連続で過去最低を更新した。宮城で64%減の3459トン、岩手で62%減の2852トンと、漁場の公海から遠い東北で特に振るわなかった。

 サンマやサケの記録的不漁の主因を地球温暖化とする水産庁の報告書を踏まえ、政府は今年3月、漁獲する魚種や漁法の複数化、兼業化といった「複合的な漁業への転換」を進める水産基本計画を閣議決定した。一方、国の統計では漁業者の約4割が65歳以上の高齢者で、後継者不足も深刻さを増す。

 「後継ぎのいない高齢者に新しい漁法や養殖業をやれというのは酷だ。他の魚を取るにも既存の漁師との調整が必要で、われわれの力だけでは限界がある」と阿部さん。水産業の将来に必要な政治の光が届かない現状を憂える。
(石巻総局・大芳賀陽子)

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