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いしのまき食探見>クジラ 伝統の滋味に新たな風

黄金寿司のクジラ料理。(写真上から時計回りに)ミンククジラの刺し身、ユッケ、握り
バリエーション豊かな木の屋石巻水産のクジラ缶詰。最新作の「イタリアンバーグ」や「鯨カルビ」は若い世代にも人気

 海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。

クジラ

 かむほどに味わい深い赤肉と、とろける脂身の皮。重ねて口に入れるとうま味が増し、食感の違いもくせになる。

 捕鯨基地を抱える石巻市ではさまざまなクジラ料理が味わえるが、外せないのは定番の刺し身。鮎川地区の拠点エリアにある「黄金寿司(ずし)」では、ミンククジラの赤肉と皮、舌の「さえずり」を盛り合わせて提供する。薬味はショウガが一般的だが、地元では七味唐辛子派もいるそうだ。

 商業捕鯨が2019年7月に再開したことで船上での血抜き処理などができるようになり、鮮度や肉質が向上。上質な生肉が手に入りやすくなった。同店の古内勝治さん(78)は「色がきれいで身が柔らかい」と太鼓判を押す。

 国内有数の捕鯨基地として栄えた鮎川地区。最盛期の1950~60年代は湾内に捕鯨船がひしめき、盛んにクジラの解体作業が行われ町は活気づいた。内臓や尾ビレまで工夫して余すところなくいただくこと。カレーやすき焼きにも使う身近な食材だったこと。古内さんの話を聞き、鯨食文化をより尊く感じた。

 伝統の継承は課題の一つ。市内の水産加工会社「木の屋石巻水産」はPRや商品開発に力を入れ、時代に合わせた提案で消費拡大を図っている。クジラ缶詰は定番の「鯨大和煮」をはじめ、最新作のハンバーグのトマトソース仕立てまで10種類以上ある。

 同社の松友倫人さん(42)は「高タンパク、低カロリーで食材としての魅力が高い。若い世代にも発信していきたい」と意気込む。どんな味に出合えるのか、期待が膨らんだ。(奥山優紀)

<メモ>
 鮎川地区の拠点エリア「ホエールタウンおしか」の観光物産交流施設では黄金寿司など3店でクジラ料理が味わえる。加工品を扱う捕鯨会社の直売店もある。エリア内の「おしかホエールランド」ではクジラの生態や地区の捕鯨文化が学べ、屋外では捕鯨船「第16利丸」が乗船公開されている。ホエールランドと利丸は水曜定休。

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