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「和泉家文書」下巻完成 石巻古典歴史研究会、2年かけまとめる

完成した下巻を手にする今野さん(右)と秋山さん。手前は和泉家に保管されていた古文書のコピー

 石巻古典歴史研究会が江戸末期の古文書を解読した「和泉家文書」の下巻「緊張の蝦夷地 警固武士の在勤心得」(A4判、256ページ)が完成した。2020年11月に上巻が完成した後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で思うように解読の勉強会を持つことができない中、2年をかけてまとめた。

 収められた古文書は江戸末期に釧路御用所の役人だった大嶋昌一が写し書きした公文書が大半。住民らが御用所に届け出た書類などで、同研究会によると、役人が業務を進める際の手引書に使われていたものではないかという。

 古文書は保管していた和泉家8代目の和泉康樹(こうじ)さん(75)=石巻市駅前北通り2丁目=から譲り受けた。東日本大震災当時、和泉家は同市門脇町1丁目にあり、津波被害の中、奇跡的に残った。

 「祖父(6代目)から初代の善吉は仙台藩の武士で馬回り役だったと聞いたことがある」という康樹さんの話と当時の時代背景とを考え合わせ「幕末に蝦夷地(北海道)に転勤を命じられ、現地で大嶋氏と関わりがあったのではないか」と文書が和泉家に残った経緯を推察する。

 江戸末期は仙台藩はじめ奥羽5藩(のちに会津も加わり6藩)が「蝦夷地警備」に当たっていた。文書下巻は蝦夷地での警備、開拓のほか、ロシア人が上陸しないよう漁師たちに注意を促す文書などをまとめた「蝦夷地在勤心得」が中心。年始や暑中見舞い状の例文や英語、ロシア語の和訳集なども収録されている。

 和泉家文書の解読は7人のメンバーで始めた。中心となった今野憲穂さん(84)=石巻市蛇田新前沼=は「会として一つのものをまとめることができてほっとした」と話す。秋山正義さん(78)=同市向陽町2丁目=は「調べ方の工夫、技術も上がった。楽しみながらできた」と満足そうだ。

 完成した下巻は上巻同様に石巻市図書館と県図書館(仙台市)に寄贈した。

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