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わいどローカル編集局>しらさぎ台(石巻市須江)

造成中のしらさぎ台と周辺地区。田園地帯の丘陵部に広大な土地を切り開いた=1994年9月

 石巻地方の特定地域のニュースを集中発信する「わいどローカル編集局」を開設します。初回は「石巻市須江しらさぎ台」です。

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遺跡眠る丘、宅地に 震災後に人口急増

 しらさぎ台は1995年、石巻市須江の丘陵部に誕生した。当初は景気低迷で空き地も目立ったが、東日本大震災後の移転需要で人口が急増した。環境を目まぐるしく変えてきた「高台のニュータウン」。その土地の歴史をたどった。

 しらさぎ台を含む須江丘陵南部は関ノ入遺跡や長者館跡など多くの遺跡が点在する。旧河南町史などによると、奈良時代や平安時代の住居跡に加え、土器の「須恵器」を焼いた窯跡などが数多く発掘されている。須江丘陵は古代東北最大級の窯跡群と推測され、須江の地名はこの須恵器に由来するとも言われる。

 「戦後間もなくは何もない真っ暗な山だった」。しらさぎ台へ続く坂の登り口の畳石地区に暮らす三浦義介さん(80)が振り返る。5歳の頃、復員した父親が土地を買って入植した。

 開墾し、ヤギを飼い、ウナギを捕って売った。10軒ほどが集まって小さな集落はできたが、山には道もなく、ほとんど立ち入らかったという。

 宅地開発が動き出したのは1988年。土地区画整理組合が設立され、文化財調査などを経て92年に本格的な工事が始まった。山を削り、約36ヘクタールを造成する大工事。三浦さんは「土地をならすだけで2年はかかった。ひっきりなしにトラックが行き来した」と懐かしむ。

 完成後、10年ほどで宅地の約3分の1が売れたが、景気悪化で閑散とした状態が長く続いた。状況を一変させたのが震災だった。内陸に土地を求めた被災者の移転需要が集中。空き地が次々と埋まり、公示地価の上昇率は2012年から3年連続で全国トップだった。

 震災前に1363だった人口は、今年10月末現在で2022まで増えた。若い世代が多く、街には子どもたちの姿も目立つ。坂の上の変遷を見つめてきた三浦さんは「今の姿は想像できなかった。人が多いと活気があっていいね」と笑顔で語った。

広報紙「しらさぎ便り」、区長が発行

白と青のみで構成された紙面

 しらさぎ台の住民向け広報紙が「しらさぎ便り」。稲葉憲一郎区長(75)が制作、発行に当たる。区長に就任して4年目。前区長から発行業務を引き継ぎ、月1回のペースで、月末に発行している。

 町内会役員会や石巻署河南駐在所などから寄せられた情報を元にした話題を、A4判の限られたスペースに5~6個配置し、簡潔に分かりやすく伝える。挿絵もピクトグラムのようなシンプルな図案で統一し、視覚で内容を補助する。

 稲葉区長は「余計なことや推量は書かずに引き算すればおのずとこうなる」と話すが、青のインクで印刷することで印象付けたり、重要な事柄を目に付きやすい左上に配置したりと工夫は多い。

 約640世帯、約2000人が暮らすしらさぎ台。住民へ確実に情報を届けるため、32ある班の班長に配布を依頼し、県の広報などと一緒に各世帯にポスティングしている。

 住民からはごみ出しのルール違反や鹿の目撃情報などが寄せられ「次号に掲載して周知してほしい」と依頼されるという。

 「多くの住民に大事な情報や危険を知らせる責任があり、事実と違うことは書けない」と稲葉区長。誠実な仕事が住民の安心を支えている。

震災で実家被災、移り住む

調理場で料理の仕込みをする高橋さん

 「子どもの頃にここの山を崩していた記憶があるが、まさか自分が住むことになるとは思わなかった」。しらさぎ台3丁目で「日本料理 大川」を営む高橋俊さん(37)が振り返る。

 石巻市大川地区出身。東日本大震災で実家が被災し、母の満枝さん=当時(53)=と祖母のもと子さん=同(76)=を亡くした。津波の危険がない土地を探し、父の幸生さん(65)と2012年、しらさぎ台に自宅を再建。修業先の大阪から帰郷した。

 初めて地区を訪れた時は、その広さに驚いたという。暮らし始めた当初は目印になる店舗などが現在よりも少なく「家に帰るのに道に迷った」と笑う。

 市内の料理店で腕を磨き、自宅に店を構えたのは2018年5月。旬の魚介類など厳選した素材の味を引き出し、提供する。立地は市街地から離れ、交通の便も良いとはいえないが「次に流れる店がないので最後までゆっくり楽しんでもらいたい」と心がける。

 地区の印象は「温かい人が多い」。21年5月に妻の久美さん(41)と結婚。長男瑠玖(るうく)ちゃん(1)も生まれた。同世代の家族が多いのも地区の特徴だ。「息子と同い年の子どもも結構いる。友だちがたくさんできそうでいい」

 同じ高台にある霊園「石巻望洋苑(えん)」には満枝さんが眠るお墓がある。天気が良ければ満枝さんの実家の網地島も見渡せるという。高橋さんは「すぐ近くなので、母が見守ってくれている気がする」と語った。

日本料理 大川

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 今回は佳景山、広渕両販売店と連携し、保科暁史、西舘国絵の両記者が担当しました。次回は「東松島市野蒜ケ丘」です。

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