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跳ねる 石巻地方から(4)家族と紡ぐ愛される味 鮱名真奈美さん

父母の味継ぎ せんべい店起業 鮱名真奈美さん(47)

長女と一緒に出来たての商品を持つ鮱名さん(右)

 サクッと割れ、上品な甘みと優しい香りが口の中に広がる。

 昨年12月20日、石巻市北村にオープンした「えび屋」の手焼きせんべい。代表取締役を務めるのが鮱名(えびな)真奈美さん(47)=石巻市わかば1丁目=だ。

 父の沢田英機さん(78)が仙台市内に長年店を構え、父母が作り続けた素朴な瓦せんべいを基に工夫を凝らした。店は高齢を理由に畳む予定だったが、父の焼くせんべいの味を残したいと、鮱名さんが住む石巻市で父母の味を継ぐと決意した。

 店名を改め、鮱名さんの名字と魚のまち・石巻にふさわしい「えび屋」とした。父の手伝いをしたことはあるが、店の経営は初めて。市創業支援推進事業の一環の「創業開成塾」で経営の基礎を学び、市内で起業を目指す事業者が商品のテスト販売などに取り組む「ISHINOMAKIトライアルマーケット」にも参加し、準備を進めた。

 時も味方した。鮱名さんの夫が営む冷凍設備メンテナンス業の事務所、保管用倉庫とも東日本大震災で全壊。事業を再開し軌道に乗るまで二人三脚で奔走。ようやく盛り返したさなかに父の決断を聞いた。

 夫の理解もあってせんべい店を継ぐことになり、鮱名さんの長女(27)も会社を辞め、従業員となった。父母は鮱名さんの決断に勇気を得て石巻市に移住。家族4人で再出発を切った。

 せんべいの生地には東松島市鳴瀬地区産の小麦粉と国産のてんさい糖、バターを使う。4種の味はコーヒー、酒かす、シソ、緑茶で変化を付けた。着色料や保存料を使わず、小さな子どもでも安心して食べられる商品にした。

 鮱名さんは「石巻ならではの海産物の利用も考えたい。まずは地元に愛される店にしたい」と意気込む。

 店の近くにあるコーヒー工房などとのコラボ企画の話も出るなど、順風を帆に受けつつ店は着実な歩みを始めた。

 耳の不自由な人にも応対できるように筆談での購入を可能にするなど商品同様、優しい店を目指す。「人が笑顔になり、愛される商品として心を込め続ける」。鮱名さんの思いだ。(佐藤紀生)

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