福島第1原発処理水 海洋放出、今春から夏ごろ 県漁協「反対の立場変わらず」
政府は13日、東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出に向けた関係閣僚会議を首相官邸で開き、風評対策の行動計画を改定した。放出の開始時期を「今年春から夏ごろ」と具体化した。安全性の発信や漁業者支援に取り組むことで国民の理解醸成を加速させる方針も盛り込んだ。
放出時期を巡り、政府は2021年4月に決定した基本方針で「今後2年程度後」としていた。設備工事の進捗(しんちょく)状況や原子力規制委員会の使用前検査、国際原子力機関(IAEA)による安全性検証の報告を見据え、より具体的な時期を書き込んだ。
松野博一官房長官は「安全確保と風評対策に必要な具体策のメニューはおおむね出そろい、今後は実効性を上げていくことが大切だ。地元関係者の懸念に耳を傾け、丁寧な説明を尽くす」と述べた。
行動計画には、放出前後の海域モニタリングで安全性を確認し、国内外への周知を徹底すると明記。500億円の基金を活用して全国の漁業者の事業継続を支援するほか、風評被害で消費需要が落ち込んだ際は政府が一時買い取り・保管する対策も盛り込んだ。
汚染水の発生を抑える取り組みを強化する方針も改めて確認した。
政府は基本方針決定後の21年12月、風評対策をまとめた行動計画を策定した。
県漁協の寺沢春彦組合長は石巻市開成の県漁協本所で取材に応じ、「漁業者の総意として海洋放出に反対という立場は変わらない。国に責任ある対応を求めていく」と強調。風評被害についても「落ち度がない生産者らが不利益を被らないようにしてほしい」と訴えた。