幸福度ランキング、宮城は何位? 民間団体公表 「主観的な豊かさ」の共有目指す
「幸せに過ごせますように」。新年を迎え、多くの人がそう願ったことだろう。幸せの形は一人一人違っていて目には見えない。ただ、幸せを感じているかどうかは一人一人に尋ねることで数値化できる。肉体的、精神的、社会的に良好な状態であることを指す「ウェルビーイング(Well‐being)」=※キーワード=を研究する団体は昨年12月、都道府県別の指標を公表した。全国トップは神奈川。では、宮城県は何位だったのだろうか。
(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)

「キャントリルの階梯」
公表したのは2021年12月にできた一般社団法人「ウェルビーイング学会」(代表理事・前野隆司慶応大大学院教授)。生活の豊かさを実感しているかどうかを電話で聞き取り、1012人から有効回答を得た。
調査は国際標準とされる「キャントリルの階梯(かいてい)」と呼ばれる手法を用いた。10段のはしごを想像し、一番上の10を最も理想的な生活、一番下の0を最悪の生活を表すと考える。その上で①今、どの段に立っていると感じているか②5年後にはどの段に立っていると思うか―を尋ねる。
学会は現状で7以上、5年後で8以上と回答した人をウェルビーイング(生活の豊かさ)実感が高い人と定義する。

日本は3・7人に1人
2022年7~9月期の調査で、日本全体は3・7人に1人に当たる27%が「今の生活にある程度満足し、かつ将来の生活に対して明るい見通しを持っていた」。前期(4~6月期)比3ポイント減、前年同期比5ポイント減だった。
都道府県別の推計で1位は神奈川(30・7%)。東京、兵庫と続いた。宮城は25・8%で14位。下位3県はいずれも東北で、45位山形(23・8%)、46位秋田(23・6%)、47位は福島(23・2%)だった。
前野代表理事は「幸福度の序列化や優劣比較を目指すものではない。あくまで、定点観測することで各地域の幸福度向上を目指す道標にしてもらうことが目的だ」とコメントする。
学会は「国内総生産(GDP)が客観的な豊かさを示すとすれば、主観的な豊かさを示す指標も同時期に公開されるべきだ」という考えから、今後も四半期ごとに結果を公表する予定だ。
【「生活の豊かさ」が高い人の割合】
( 1)神奈川 30.7%
( 2)東京 29.4%
( 3)兵庫 28.3%
( 4)大阪 27.7%
( 5)福岡 27.6%
ーーーーーーーーーーーーー
(14)宮城 25.8%
(24)岩手 25.0%
(34)青森 24.6%
ーーーーーーーーーーーーー
(43)静岡 24.1%
(44)和歌山 23.9%
(45)山形 23.8%
(46)秋田 23.6%
(47)福島 23.2%
北欧各国が上位
日本の水準は世界的に見てどうなのか。国連の持続可能開発ソリューションネットワークは毎年3月、キャントリルの階梯に基づく「世界幸福度調査(World Happiness Report)」を公表している。
2022年の結果は1位フィンランド(7・821)、2位デンマーク(7・636)、3位アイスランド(7・557)で、北欧が上位を占めた。日本(6・039)は先進国で最下位の54位だった。146カ国中、最下位はアフガニスタン(2・404)だった。
四つの因子で説明
持続可能開発ソリューションネットワークによると、主観的な幸福度を説明する要素として次の6項目が考えられる。影響力の強さ順に①1人当たりの国内総生産(GDP)②困ったときに頼れる人がいる(社会的支援)③健康寿命④自分の人生を自由に選べる⑤政治やビジネスの腐敗⑥他者への寛容さ―とされる。
国内における幸福学の第一人者である前野代表理事は著書「ウェルビーイング」(日本経済新聞出版)で、幸せを四つの因子で説明する。やりがいを持って主体的に成長しようとする「やってみよう」因子、つながりや感謝を持って人間関係を築く「ありがとう」因子、前向きかつ楽観的にチャレンジ精神を発揮する「なんとかなる」因子、他人と比べ過ぎず自分らしさを保つ「ありのままに」因子だ。これら四つを意識し、実践することで幸福度が高まると主張する。
【キーワード=ウェルビーイングとは】
1947年に採択された世界保健機関(WHO)の憲章で「健康」の定義に使われた。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあることをいう」(日本WHO協会訳)の中の「満たされた状態」が「ウェルビーイング」。心身の「健康」にとどまらず、社会の良好な状態をつくる「福祉」、主観的な「幸福」も含む考え方とされる。

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