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仙台育英、サヨナラV 柴田下し2年連続「夏」 第95回全国高校野球宮城大会(最終日)

 第95回全国高校野球選手権宮城大会は最終日の31日、仙台市宮城野区の日本製紙クリネックススタジアム宮城(Kスタ宮城)で決勝が行われ、第1シードの仙台育英が柴田に6-5でサヨナラ勝ちし、2年連続24度目の甲子園出場を決めた。

 仙台育英は5-5で迎えた九回、3四死球による2死満塁から小林遼が決勝の押し出し四球を選んだ。一回に5点先取を許したが、四、五回と着実に反撃して3-5の八回に上林誠知のソロ本塁打、加藤尚也の適時打で同点とした。

 11年ぶり2度目の決勝進出を果たした柴田は一回に5点を奪ったが二回以降は無得点。先発岩佐政也もリードを守りきれず、初の全国大会出場を逃した。

 ▽決勝
柴田   500000000 =5
仙台育英 000120021×=6

5点差劣勢はね返す

 【評】仙台育英が九回にサヨナラ勝ち。5-5のこの回、3四死球で2死満塁を築くと、小林遼が四球を選んで押し出しで決勝点を奪った。0-5の四回に小野寺俊の適時打で1点、五回に上林の適時二塁打で2点を返すと、八回は上林の右越えソロ本塁打と加藤の適時打で追い付いた。四回途中から登板した右腕鈴木が無失点の好投。

 柴田は一回、松崎の適時打、三浦の2点三塁打などで5点を先取したが、二回以降は打線がつながらず、主戦の右腕岩佐を援護できなかった。

仙台育英「守りからリズム」 着実に反撃、逆転劇へ

仙台育英-柴田 8回裏仙台育英無死、右越えにソロ本塁打を放ち、ガッツポーズをしながら一塁を回る上林(手前)

 一回に5点を失うのは、準々決勝の大崎中央戦に続いて今大会2度目だ。それでも攻守の勝負どころで集中力を発揮し、徐々に柴田を追い詰めた結果が、最終回の逆転勝ちにつながった。

 劣勢になり、まずは守りが引き締まる。二回も安定しない先発馬場が安打で相手の出塁を許すも、遊撃熊谷が好守で併殺に仕留める。三回も三遊間に抜けそうなゴロを好捕した熊谷は「守りからリズムを作れば流れがくる」と信じた。

 そして攻撃。四回、上林が気迫の一塁へのヘッドスライディングでチーム初安打となる内野安打で出塁した。一回に2失策した小野寺俊が「何とかしたかった」と1点を返す適時打で続く。

 チームを勢いづけたのは、やはり主砲上林だ。五回2死満塁で右翼線2点二塁打を放ち2点差に詰め寄る。圧巻は八回。高めに浮いた直球を見逃さず右翼席へ放り込み、「4番の仕事ができた」と涼しい顔で話した。この後、加藤の同点適時打も出て、九回の逆転劇を呼び込んだ。

 全国に名が知られる強豪が5点を追うまさかの展開。「選手を信じた」と言う佐々木監督の期待に応え、浮足立つことなく勝利をつかみ取った。佐々木監督はナインの精神的な成長をかみしめた。(加藤伸一)

好救援鈴木、流れ変える

 仙台育英は2番手の鈴木が四回途中から登板。好投を見せて柴田の勢いを断ち切った。

 「あまり経験がない」というイニング途中からの登板で、しかも2死二塁というピンチの場面。2番の葛西を遊ゴロに仕留めると、五回にも得点圏に走者を背負いながらゼロに抑える。「6点目を取られたら終わりだと思っていた」。気迫の投球で反撃を待った。

 「流れを変えるための投手交代だった」と言う佐々木監督の期待に十分応える働きだった。優勝投手のパフォーマンスも考えていたが、サヨナラ勝ちでお預けに。「甲子園に取っておきます」と笑った。

柴田・岩佐、最後の一球 「直球、力出し切った」

仙台育英-柴田 9回裏仙台育英1死一、三塁、上林(右)を敬遠し、マウンドで声を掛け合う柴田の主戦岩佐(左)と捕手三浦

 岩佐の大会611球目とともに初の甲子園行きを懸けた夏が終わった。

 5-5の九回2死満塁、小林遼へ投じた147球目。こん身の直球が浮いて外れ、押し出し四球となった。相手の歓喜の瞬間、主戦はマウンドでうなだれた。

 「結果は野球の神様が決めたこと。最後まで胸を張ろう」と相棒の三浦が精いっぱいの笑顔で、燃え尽きたエースに声を掛けた。

 130キロ台中盤の直球とフォークボールを武器に4戦連続完投で導いた決勝の舞台。一回に5点の援護を得ると「いける、と気持ちが入った」。中盤までリードを守った。

 疲れで握力がなくなり、上林にソロ本塁打を浴びるなどし、八回に追い付かれた。九回の押し出し四球も制球に苦しみながら「直球で、最後まで力を出し切る」と投げた結果だった。

 肩、肘の度重なるけがを克服し、右腕は最後の夏に懸けた。過去2度の公式戦で先発完投して負けた仙台育英に接戦の末に屈した。

 「敗れたのは悔しい。でも東日本大震災の年に入学した球児として自分たちの分も頑張ってきてほしい」。泣き腫らした顔で気丈に勝者を送り出した。(金野正之)

鈴木に沈黙の柴田打線「精神力の差」

 初の甲子園出場を目指した柴田が惜敗。平塚監督は「鈴木君に代わってから、攻撃が淡泊になってしまった」と振り返った。

 仙台育英には今春の県大会準々決勝で1-2で競り負けた。以後、打線の強化を図ろうと、通常よりも5メートル近い位置から打撃投手に投げさせる練習に取り組んだ。成果は出て、一回に5得点。しかし「過去1イニングしか対戦していない」(平塚監督)という鈴木が登板すると沈黙し、わずか1安打。

 2年生の4番宗片は「岩佐さんを助けられなくて申し訳ない。鈴木さんと対戦して勝負どころで力を発揮する精神力の差を感じた。今回の経験を来年に生かしたい」と力強く語った。

柴田町民「決勝進出、十分うれしい」

 終盤までリードした柴田が最後にひっくり返された。

 学校がある柴田町の町役場では、お年寄りや主婦が1階ロビーのテレビに見入り、固唾(かたず)をのんで試合を見守った。押し出し四球で敗戦が決まると「駄目か…」とため息が漏れた。

 同町の会社員千田祐午さん(62)は「決勝までいったので十分うれしい」と選手をねぎらった。野球部OBの町職員金田和則さん(37)は「悔しい結果だが、私立高と互角に戦った。今回の経験を糧に来年こそ甲子園を目指してほしい」とエールを送った。

本塁打、チームに勢い 仙台育英・佐々木順一朗監督の話

 決勝でこれだけの劣勢をはね返したことは記憶にない。岩佐君はいい投手。非常に苦しい試合だった。八回に上林のホームランが出て、これでいけるという雰囲気になった。

甲子園でも諦めない 仙台育英・上林誠知主将の話

 苦しい試合だった。大会を通して劣勢の試合が多かったが、何度もひっくり返して優勝することができた。この経験を生かして、甲子園でも最後まで諦めない野球をしたい。

最後までよく投げた 柴田・平塚誠監督の話

 選手たちは最後まで頑張ってくれた。岩佐は七回まではいい調子で投げてくれたが、八回には球が走らなくなり、打たれてしまった。それでもよく投げて最後までチームを支えてくれた。

勝負どころで力の差 柴田・三浦大希主将の話

 岩佐を助けてあげたかったが、相手の総合力がすごかった。勝負どころでしっかりと打って、守るという点で力の差が出たと思う。仲間には心を込めて「ありがとう」と言いたい。

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