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精神障害者支援の難しさ浮き彫りに 仙台・女子中学生刺傷事件<WEB傍聴席>

 仙台市太白区で昨年7月、通学途中の女子中学生2人が包丁で刺された通り魔事件の裁判員裁判で、仙台地裁は11月29日、精神障害を患う男(45)の完全責任能力を認め、懲役16年(求刑懲役17年)の判決を言い渡した。事件から精神障害を患う人々への社会による支援の難しさと厳しい現実の一端が浮かび上がった。
(報道部・石川遥一朗、中村楓)

 「つらい気持ちを吐露する機会があれば(犯行を)とどめることができたかもしれない」

 11月21日の仙台地裁102号法廷の証人尋問。被告の生活を8年間支援してきた精神保健福祉士の男性は、事件の責任は自身に全くないにもかかわらず、自責の念を口にした。

「死刑になって死のう」

 仙台市で生まれた被告は高校入学後、家庭の事情で授業料を払えずに退学。通信制の高校で学び直しを目指すも、再び授業料を払えなくなり退学した。

 その後は多賀城市の実家に引きこもった。格闘ゲーム「ストリートファイター」やロールプレーイングゲーム「ファイナルファンタジー」などテレビゲームに没頭して時間をつぶす日々を送った。

 人に監視されているという妄想は、この頃に始まった。24歳で妄想型統合失調症を発症。名取市の宮城県立精神医療センターへの入退院を7回繰り返し、最長で5年半入院した。

 「誰かに見聞きされている」

 「ヘリコプターが追いかけてくる」

 「近所の人が悪口を言う」

 20年以上も妄想に苦しみ続けている。

 外出も難しかった。食べ物や日用品は、自宅から徒歩1分のコンビニエンスストアとドラッグストアの2店でそろえた。「自分が買った商品は誰も買わなくなる」。買い物する際も妄想に悩んだ。

 「生きていてもつまらないから、早く人生を終わらせよう」

 「死刑になって死のう」

17センチの包丁選ぶ

 安倍晋三元首相が奈良市で選挙応援演説中に銃撃された2022年7月8日。その前日に事件は起きた。

 家にあった刃物の中で、…

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