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<大観音の傾き(9)>大観音の使者になる 山野辺太郎

 その駅で降りたのは修司だけだった。銀色の車体に赤と緑の横縞(よこじま)の入った列車が遠ざかってゆく。

 無人の駅を出ると、単線の鉄路に併走(へいそう)する道をしばらく歩いて、踏切を越えた。山あいの土地に水田が広がり、植えられたばかりの苗の緑とともに、水面の白い光と底の土の色が目についた。十字路に出た…

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