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夏はひんやり【特集】「仙台名物」冷やし中華

 今年も暑い暑い夏がやってきた。食欲が落ちる日には、喉をするりと通る冷やし中華といきたい。仙台が発祥とされ全国に広まった夏の料理は、伝統を守りつつさまざまな進化も遂げている。いま食べられる冷やし中華を巡ってみた。

《笹屋》これぞ宮城! 丼覆う気仙沼ホヤ ~海鞘冷やし中華 1100円(5~9月提供)~

人気の「海鞘冷やし中華」だが、不漁により提供できない日があるかもしれないとのこと

 明かりがともる店の看板の下で、のれんと「冷やし中華」ののぼり旗がそよ風に揺れている。

 壱弐参(いろは)横丁にある1948(昭和23)年創業の老舗が提供する冷やし中華は、具材の違いで3種類。いずれにも、豚肉から取った自家製スープをベースに、地元産醬油などで芳醇(ほうじゅん)な香りとまろやかなコクをまとわせたたれが注がれる。これを、弱い縮れが入った極細麺をからめて口に入れると、たれの酸味も手伝ってさっぱり食べられる。

 1番人気は、気仙沼産ホヤを丸々1個盛り付けた「海鞘冷やし中華」。最も味が濃くおいしい時季のホヤを瞬間冷凍したものを解凍して使うことで、つるんとした食感と心地よい苦みを常に堪能できる。

 2代目店主の中村俊男さん(73)は「地元の旬の素材を使い手作りすることで、おいしいものが手ごろな価格で提供できる」とにこやかに話してくれた。

店は中村俊男さんと妻の治(はる)子さん、娘の友美さんらで切り盛りする

【DATA】
青葉区一番町2-3-28 壱弐参横丁内
TEL022-267-3039
営/月~金曜11:00~LO14:45、17:00~LO18:45
休/土曜、第2・4土曜翌日の日曜

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《台湾中国料理 燕来香(エンライシャン)》キレとコク ゴマだれたっぷり ~ゴマだれ冷やし中華 1150円 ※8月から1250円(通年提供)~

麺、具材、たれ、お皿。全てを冷たく保ったまま素早く盛り付ける

 さらっとしたゴマだれが注がれたお皿の中を、冷たい麺と具材をくぐらせて口に運ぶ。ゴマだれはスープのようにスプーンですくってごくり。

 まろやかな風味をピリッとした辛さが引き締めるゴマだれは、香りやきめの細かさで選んだ練りゴマに、自家製マヨネーズ、酢、醬油、隠し味の練りからしなどを加えて創り出す。酸味を抑えながら深いコクとキレを楽しめる逸品だ。

 麺は細いストレート。軟らかめにゆでた後、流水と氷水で締める。水分を切ったら、冷やしたお皿に、これまた冷やしておいた具材とともに手際よく並べていく。最後にこだわりのゴマだれをたっぷり回しかければ完成だ。

 料理長の森本真一(48)さんは「ゴマのしつこさや油っぽさを打ち消し、さらりと食べられるように冷たさを保ったまま調理することが重要」とこだわりを教えてくれた。

青葉区国分町から移転してまもなく4年。味へのこだわりは変わらない

【DATA】
青葉区花京院1-1-30
TEL022-262-7147
営/月~金11:30~15:00 17:00~LO22:00
土・日曜、祝日11:30~LO22:00
休/なし

WEBサイト
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《中国料理 龍亭》別皿で楽しむ「元祖」の味 ~涼拌麺(元祖冷し中華) 1540円(通年提供)~

「お客さんを待たせない」との配慮から、35年ほど前に麺と具材が別皿となった

 元祖「中国料理 龍亭」は、発売から90年近く経た現在も当時の「涼拌麺(りゃんばんめん)」という料理名で提供を続ける。

 特徴は、なんといっても麺と具材が別皿なこと。皿に並ぶ具材はそれぞれ、もちもちの中細麺に合わせて切り方を変え、味付けなども施されているため、前菜のように具材だけを食べてもいい。

 たれは、2種類から選べる。醬油だれは、その日搾ったオレンジとレモンの果汁で酢の酸味に丸みを持たせ、フルーティーでまろやかな香りが楽しめる。ゴマだれは、練りゴマに、少量のラー油を垂らすことで、辛みを抑えたキレのある風味で飽きが来ない。

 四代目店主の四倉暢浩(のぶひろ)さん(56)は「天候や麺の状態に合わせて麺のゆで時間やたれを変え、いつでも『あの味』を食べられるように努めている」と味を守る苦労も話してくれた。

たれには手作業で搾ったオレンジとレモンの果汁がたっぷり入る

【DATA】
青葉区錦町1-2-10
TEL022-221-6377
営/11:30~LO14:30、宴会は17:30~LO20:30で対応
休/水曜

WEBサイト

■冷やし中華は「仙台生まれ」■

1931(昭和6)年創業の「中国料理 龍亭」は100年近い歴史がある老舗だ

 「冷やし中華始めました」ののぼり旗でシーズンの到来を知らせる夏の料理は、戦前の日本、しかも仙台で生まれたとされる。

 誕生したのは1937(昭和12)年。現在も創業の地で営業を続ける青葉区錦町の老舗「中国料理 龍亭」の創業者・故四倉義雄氏が、暑さで客足が遠のく夏場の集客策として考案したという。酸味の効いたさっぱりとしたつゆで食欲を刺激し、栄養もしっかり取れるようにとたくさんの野菜や肉類を具材として添えた。

 さらりとした食べ心地と栄養豊富な料理は広く受け入れられ、全国に広まっていったとみられる。仙台では現在、年間を通じて提供するお店も少なくない。

 ちなみに中国には、麺を水で冷やして食べるといった食文化は見当たらず、きれいな水が豊富に得られる日本だからこそ生まれた料理との見方もある。

《中国料理 廬山(ろざん)》止まらない コクのある辛み ~辛みそ冷やし中華 950円(GW~9月提供)~

人気ナンバーワンの「辛みそ冷やし中華」。「蒸し鶏冷やし中華」(980円)と「五目冷やし中華」(950円)もある

 文化横丁の店には、数種類の冷やし中華が写ったポスターが貼られている。現在提供するのは3種類。最も人気があるのは、ピリ辛の辛味噌が麺の上にかけられた「辛みそ冷やし中華」。世界86カ国を旅した店主の今井幹夫さんが腕を振るう。

 辛味噌は、特注の極粗びき豚肉を、甜面醬(テンメンジャン)や花椒(ホアジャオ)、辣醤(ラージャン)、刻んだザーサイと炒めながら仕上げていく。隠し味には八丁味噌も使う。

 注文が入ると、冷水で締めた麺の上に、ひとつかみのキュウリの千切りを敷き、その上から辛味噌をたっぷりかける。白髪ねぎをトッピングしてラー油を垂らせば完成だ。

 ひき肉がごろごろ入った濃厚な辛味噌に、つるつるの細い縮れ麺をからめて口に運ぶと、最初こそほのかに甘みを感じるものの、徐々にピリ辛感が増していく。コクのある辛みと、野菜のシャキシャキ食感で、箸が止まらなくなる。

ゆで時間も味付けも1食ごとに調整すると話す今井さん

【DATA】
青葉区一番町2丁目4-7 文化横丁内
TEL022-223-7649
営/11:00~14:30、17:00~LO20:40
(土曜祝日~20:00、日曜昼営業のみ)
休/不定休

《中華飯店 靉龍(うんりゅう)》冷たい麺と熱々焼き肉 共演 ~スタミナ冷やし1000円(4~9月提供)~

女性客からの注文の方が多い「スタミナ冷やし」。細かくちぎったレタスの上に春雨サラダをのせた5~9月限定の「冷やし中華」(1000円)も人気だ
熟練の手つきでゆでた麺をすすぐ高橋さん

 昼食時にサラリーマンが駆け込むJR仙台駅東口「中華飯店 靉龍」。この店の看板メニューが、冷たい中華麺の上に熱々の豚の焼き肉をのせた「スタミナ冷やし」だ。

 30数年前、「暑い日でもおなかいっぱい食べたくなる料理」として店主の高橋篤造(とくぞう)さん(72)が考案した。

 喉越しのよい中細ストレート麺の上に、千切りのキュウリを敷き詰める。その上に、薄切りの豚肉を甜面醬などが入った甘めのたれで味付けした焼き肉をたっぷり200g。その周りに、練りゴマにレモンやショウガを加えて作ったあっさりめのたれをかける。カイワレ大根を添えれば完成だ。

 「スープがないから物足りなさを感じないように量は多めかなぁ」と話す高橋さん。肉を頰張る夏のスタミナ料理は、働く大人たちの胃袋をがっちりつかんでいる。

「靉龍特製スタミナ冷し」と書かれた幕がかかる店舗。まさに看板メニューだ。出前もしている

【DATA】
宮城野区榴岡4-8-1
TEL022-299-1940
営/11:00~21:00
休/日曜

《中華そば 一休》レモンとだし 奏でる爽快感 ~冷しだしレモン中華 880円(5~9月提供)~

レモンは搾ってもいいが、国産はえぐみが少ないので皮ごと食べるのもお勧めだ
煮干しやかつお節など10種類以上の魚介から作ったスープは強いとろみがある

 人気ラーメン店が究極の清涼感を求めて開発したのが季節限定「冷やしだしレモン中華」だ。

 スライスしたレモンが丼の縁にぐるりと並べられ、その一角にキュウリやミョウガ、昆布を細かく刻んだ山形の夏の季節料理「だし」が盛り付けられる。見るからに涼しげな光景だ。

 しかし、本当の実力は味にある。褐色をまとったとろみのあるスープは、豚や鶏、10種類以上の魚介から丁寧にだしを取ったもの。店主の井上卓也さん(47)は「素材それぞれのうまみを引き出して融合させた強く奥深いうまみは他店にはない」と自信を示す。

 自慢のスープに合わせるのは、北海道産超強力粉「ゆめちから」を使った極細のストレート麺。強いコシと小麦の芳醇な香りが楽しめる。

 強力な素材を掛け合わせた一杯は、爽快感、コク、コシ、香りの全てを楽しむことができるぜいたくな一杯だ。

店名には一休みしてほしいとの思いを込めた

【DATA】
宮城野区宮城野1-1-37
TEL022-297-2332
営/火~金曜11:00~LO14:45、17:30~LO20:45
(土日祝11:00~LO20:45 スープがなくなり次第終了)
休/月曜(祝日の場合は営業、翌平日休み)

(河北ウイークリーせんだい 2024年7月25日号掲載)

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