さくり、しっとり【特集】パン、冷えてます

　青い空、白い雲、汗ばむ体に、冷えたパン。さくりと、しっとりと、冷たくおいしいパンを、この夏かみしめよう。

《パン甘く冷えてます》

　冷たいパン、まずは甘い逸品をご紹介。「穏やかひんやり」から「きりっと冷たい！」まで、お好みで召し上がれ。

ひんやり度 ▶︎ １：涼し～い　2：冷た～い　3：寒～い（かも）！

【ブーランジェリー ジラフ】クイニーアマン×アイス（299円）　ひんやり度 3

　フランス伝統の「クイニーアマン」の生地でバニラアイスクリームをサンドし、冷凍状態で夏季限定販売。がぶりと頬張りやすいように店頭に並ぶものより一回り小さく焼いたクイニーアマンは程よい冷たさで、キャラメリゼの食感が絶妙なアクセントに。中の冷え冷えのバニラアイスがたまらない。バターたっぷりの生地とアイスの「甘×甘」な組み合わせは背徳感があるが、見た目以上に軽い味。クロフィンLemonはレモンクリームが詰まったマフィン形のクロワッサン。冷蔵庫で冷やしてもグッド。

クロフィンLemon（ 374円）　ひんやり度 1

【ジャンヌダルクフィスエペール】白桃のペストリー（410円）　ひんやり度 2

　香り高くみずみずしいコンポートに、カスタードとホイップを合わせたディプロマットクリームをプラス。北海道産バターを使ったさくさくの生地にほろほろとしたアーモンドクリームを塗って果汁が染みるのを防いでおり、冷やすと香ばしさが際立つ。「令和至高のクリームパン」はマスカルポーネを加えたマリトッツォクリーム、果肉入りクリームの2層をもっちりとした生地に詰めた冷蔵仕様の逸品だ。時季によってクリームの種類が異なる。

令和至高のクリームパン （248円）　※写真はパイン　ひんやり度 1

【パン工房 takupan】チョコミント （270円）　ひんやり度 2

　チョコチップがざくざく入ったミントクリームを挟んだサンドは、自身が大のチョコミント好きという店主が7年前から作り続けてきた夏季の定番商品。冷やすことで本来ふんわりやわらかなほろ苦いチョコレート生地のかみ応えが増し、クリームのふわふわ食感が際立つ。バターを包んで焼き上げた三日月形のクレセント・ショコラは先端がかりかり、中心部がもちもち。冷凍または冷蔵することで、チョコレートのぱりぱりの食感が増す。

クレセント・ショコラ（260円）　ひんやり度 2

【Mon Favori BAKERY（モンファボリ ベーカリー）】アイスFavori （ 280円）　ひんやり度 3

　看板商品「Favori」は、デニッシュにシュー生地を重ね焼き上げた香ばしい皮の食感が身上。さくさくの食感が失われないよう、生クリームを絶妙な配合で加えた冷たい自家製カスタードクリームを、注文を受けてから詰めてくれる。クリームを詰めて即冷凍した夏季限定「アイスFavori」はとろ〜り半解凍が食べ時のベスト。いずれもまとめ買いするファンが多い人気商品のため、予約が確実だ。毎月8日は月替わりの「シークレットFavori」も登場する。

Favori （280円）　ひんやり度 1

《パン、旨（うま）く冷えてます》

　冷蔵庫から取り出したばかりのひんやりサンドイッチは、暑い日の食事にお薦め。最適なパンは？ 具は？ 冷やしてこそおいしいサンドイッチ作りのこつをプロに教えてもらった。

【パン屋カフェ A demain（ア ドゥマン）】合鴨と紫キャベツのマリネサンド （572円、テイクアウトは561円）

【お店の味】
　夏限定のサンドイッチです。冷やしても肉質がしっとりやわらかい合鴨（アイガモ）と、彩りを加える紫キャベツをマリネにしました。マリネ液にはレモン汁を加え、より爽やかな味に。粒マスタードと合わせたマーガリンを食パンの表面に塗り、まろやかさとピリッとしたアクセントを加えています。

冷やしておいしい総菜はサンドの具にも最適

　「冷えた状態でおいしい総菜なら、たいがいは冷えたサンドイッチの具に合いますよ」と遠藤さん。ただし、水分を多く含んだまま使うと傷みの原因になるため、「マリネはぎゅっと搾って液を切って」とアドバイスする。パンの隅々までバターやマーガリンを塗り、具を重ねていくと、断面は美しく、満足感も高まる。冷蔵庫で一時保存する場合は、カット後にラップで包むとみずみずしさを長く保てる。

【Pain Montagne（パン モンターニュ）】パストラミビーフサンド（420円）

【お店の味】
　軽い口当たりのリッチなクロワッサンと、黒こしょうなどの香辛料で調味し燻製（くんせい）したパストラミビーフの肉々しさが相性抜群です。パンの切り口に塗っているのは無塩バター。有塩バターに比べてパンの風味を邪魔しません。ほろ苦いベビーリーフが全体の味を引き締めています。

脂少なめの肉類＋チーズが好相性

　小澤さんは「肉類を具にする場合は、冷やしても脂が気にならないものを選ぶといいですよ」と提案する。ソーセージなど脂身の多い肉は冷えると脂が固まりやすいため、冷たいサンドイッチの具にはあまり適さない。ローストビーフやハムがお薦めという。チーズは肉と相性が良く、こくも加えられる。中でもカマンベールやクリームチーズはくせが少なく万能だ。バターたっぷりのクロワッサンでも、具の水分が生地に染み込むのを防ぐため、切り口にバターを塗ろう。

冷たいパン　思いは熱く　～夏もおいしく、工夫こらす～

　「暑い季節はパンが売れにくい」ことは、多くのベーカリーが抱える悩みだ。近年増えている冷たいパンは、悩めるお店側の「夏もおいしく食べてほしい」との思いの表れと言える。

　一般的なパン生地は、冷やすことでデンプンの劣化が進んだり、ぱさついたりしてしまう。各店は、配合や焼き方を冷たいパン専用に調整したり、冷蔵庫の温度を風味が損なわれない設定にしたりと試行錯誤を重ね、冷たく、おいしいパンを開発している。

　改めて今回登場の各店を振り返ると、ジャンヌダルクフィスエペールの「令和至高のクリームパン」は、食感を守るため生地の焼き色をあえて薄く仕上げ、陳列する冷蔵庫も一般的な生鮮用よりやや高い温度設定としている。

　ブーランジェリージラフは「クイニーアマン×アイス」を夏向けのワンハンドグルメとしてコロナ禍に考案。「頬張りやすさ」を考えて、常温販売のクイニーアマンより小さめだ。他にパイナップルなど冷蔵に適した食材を用いた「夏のシュトーレン」も好評で、今後も冷やし系商品を増やしていきたい考えという。

　一方で「作りたいパンのおいしい温度帯を追求した結果、冷やすのがベストだった」というのは、takupanの「チョコミント」。Mon Favori BAKERYの「アイスFavori」は「お客さんの『クリーム詰めたての味を自宅でキープするため冷凍して食べている』との声をヒントに商品化した」という。「冷たさ」ありきではない商品がある点も面白い。

　今しか出合えない〝夏限定〟の味を探しにベーカリーに足を運んでみてはいかがだろう。

（河北ウイークリーせんだい 2024年8月1日号掲載）